エルダー2020年8月号
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藤波 そうね。基本的な戦略は、「高齢者が本来持っている能力を活かす」ことにあるの。はじめ んん?藤波 高齢者は第一線で活躍できる能力を持っているでしょう。それでも、現場で高齢者が能力を発揮できないのは、高齢者に能力があっても視力や体力の低下といった問題が原因となることが多いのよ。はじめ 能力の発揮を妨げる制約をなくせば、活躍してもらえるのですね。藤波 「健康管理・安全管理」分野では、医学・工学的な知見を活かして、身体的機能の低下を補う方法や身体的負担を軽減する方法︵機械の導入、工程改善など︶、健康を維持・向上する方法などを開発し、実践してきたのよ。高齢者雇用対策は、この分野からスタートしたといってもいいくらい。だから、非常に多くの知見があるの。はじめ そうなんですね。藤波 「健康管理・安全管理」の対策をとると、現役世代も働きやすくなるから、社員全員にメリットがあるの。高齢者雇用が上手な企業は、現役社員にアピールして、現役社員も巻き込んだ全社的な活動に高めてきたのよ。はじめ 多くの賛同者を得る、上手な進め方ですね。藤波 この分野の対策は何をしたらよいのか、解説4(24頁~)に詳しく書かれているから、読んでみてくださいね。はじめ はい。高齢者雇用対策が「健康管理・安全管理」分野からスタートしたのは、対象となる高齢者が生産労働者など、工場などの現場で働く人たちに多かったからですか?藤波 そう、その通りね。はじめ 「人事管理」分野の対策は、「健康管理・安全管理」と比べて、十分ではなかったのですか?藤波 そうなのよ。かったから、労働条件は個別に決めることができたの。でも、だんだん対象者が増えて、個別対応はむずかしくなってしまったわ。はじめ 組みをつくる必要があるんですね。藤波 はじめさんの会社では、ホワイトカラー層の高齢者はどんな雰囲気で働いているのかしら?はじめ 不満を持つ人が多いんです。藤波 それをなんとかしないとね。高齢者が多くなったいま、意欲が低い高齢者が増えると、問題は会社全体に波及してしまうわよ。はじめ 藤波 持続的に経営活動を行うには、人件費もある程度抑えて、若い人たちへの世代交代も考えないといけないわよ。はじめ 課題を考えないといけないんですね。藤波 人事管理分野の問題は、比較的新しい課題なの。2006︵平成18︶年以降に顕著になってきたのよ。はじめ 定法が施行された時期ですね。昔は、高齢者の人数が少な今後も高齢者は増えるから、どこかで仕定年後に労働条件が下がったといって、雰囲気がよくないのは、嫌ですね。この制約のなかで、高齢者の労働意欲の2004年に改正された高年齢者雇用安藤波 60歳以降の雇用確保が企業の努力義務になって、60歳以降も働くホワイトカラー層が増えたの。団塊世代が定年を迎えた当時は、高齢者の労働意欲を高めることよりも、雇用機会の確保で精一杯だったのよ。はじめ 「福祉的雇用」と呼ばれている活用方法ですね。藤波 に仕事上の責任が大きく変わる場合が多かったの。管理職は役職を離れるから、仕事内容も大きく変わってしまうし、賃金水準も大きく下がってしまう。仕事も変わり、賃金も下がるから、労働意欲は相当低下していたのよ。はじめ しょうか。藤波 はなかったわ。定年前後の労働条件の変化はホワイトカラーの方が大きいから、抱える課題も多かったわけね。さらに、ホワイトカラーの人数も増えているから、問題は一層、深刻だったの。はじめ が出ているんですね。藤波 てしまうわね。はじめ がります。そうね。特に、ホワイトカラーは定年を機工場で働く人たちは、どうだったので定年を経ても、体力があれば、大きな変化いろいろな会社で、私の会社と同じ課題労働意欲が低い人が増えると、企業も困っ労働意欲が下がれば、企業の生産性も下 2020.8860代前半層の人事管理は進化する

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