期待レベル高低弱強9藤波 だから、最初は「福祉的雇用」をしていた企業も、人件費と世代交代の制約があるなかで、高齢者の戦力化に舵かじを切るようになってきたの。はじめ 定年を延長するんですか?藤波 そうではないわ。定年前後で人事管理を変えるという「一国二制度型」※は維持して、高齢者の戦力化を図るのよ。それも一歩ずつね。はじめ 高齢者の人事管理を、現役時と「まったく異なる」状態から「近い」状態に変えるのですね。具体的に、どのような段階をふむのでしょうか。藤波 高齢者の期待レベルによって、いくつかの段階にわけられるの。細かくするとわかりにくいから、概要を掴つかむために三つにしましょうね。はじめ ざっくりでお願いします!藤波 第一段階は「福祉的雇用」、第二段階は「弱い活用」、第三段階は「強い活用」としましょう。図をご覧になって。縦軸は期待レベルを示しているの。現役時代と比べて、高齢者の期待レベルはどの程度なのかを示しているわ。箱になっているのは、高齢者の社員間で幅があるからよ。右に進むほど、活用レベルが上がると思ってね。はじめ 一番左が、福祉的雇用ですね。2006年当時の活用といったところでしょうか。藤波 そうね。高齢者の人事管理は、現役時と比べて「まったく異なる」状態よ。はじめ 期待役割は大きく変わり、賃金水準も大幅に下がるんですよね。藤波 第一段階は、戦略なき活用で、高齢者を戦力として活用する考えはまったくない状況なの。はじめ 藤波 仕事内容はあまり変えないけれど、仕事上の責任を下げて活用する段階ね。圧倒的多数が、いま、この段階にいるわ。はじめ が、「福祉的雇用」との違いですね。藤波 第二段階は、期待役割の変化を前提に、人事施策を整えることが、人事の課題になるの。はじめ 応してもらえるのでしょうか。藤波 雇用管理と報酬管理の二つの分野で、考えてみましょう。はじめ 藤波 雇用管理分野で重要な対策は、「期待する役割を伝えて、希望を知り、労使で調整する仕組み」を整えることよ。はじめ ばよいのですか?藤波 二つあるわ。一つ目は、会社が高齢者に期待する役割を伝えて、高齢者が希望する仕事を把握し、話し合いを通じて調整することね。雇用契約を見直すとき、または目標管理と同時にするとよいのではないかしら。はじめ なくて、社員の情報を得ることも大事なんですね。藤波 でも、これだけでは、不十分なの。はじめ 藤波 変化にスムーズに適応するには、事前の準備が必要になるの。定年を迎えて、明日から違う第二段階は「弱い活用」ですね。きちんと高齢者の活用を意識するところ何をすれば、期待役割の変化にうまく適はい。盛りだくさんです。具体的に、何をすれ会社側の期待を一方的に伝えるだけじゃむむ。役割でがんばってくださいといっても、気持ちの切り替えはむずかしいよね。はじめ す。急に変わるのは、だれでもむずかしいでキャリア研修(意識転換)仕事上の責任は大きく変えるが、ほとんど対策はない現役時代の期待レベル期待役割の伝達管理職への支援働きに見合った報酬仕事上の責任を軽減する方針&変化への適応を支援する活用レベルキャリア研修(能力向上)仕事上の責任は変えない方針&第一線での活躍を支援する人事施策を拡充キャリアの調整仕事基準の基本給人事施策を拡充<福祉的雇用>戦略なき活用の状態※ 一国二制度型……同じ会社のなかに、現役社員用の人事管理と、高齢社員用の人事管理が共存する状態のこと。詳しくは47頁「高齢社員の賃金戦略」を参照図 高齢者の活用段階と人事施策<弱い活用><強い活用>
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