エルダー2020年8月号
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問題の原因は全員一律の処遇の再雇用高齢社員活用の基本方針を考えるトラブルの要因うため、役割は明確化され、仕事の成果に応じて処遇が決められています。人事評価を実施して、その結果を昇給や賞与などに反映するので、月例賃金と賞与は個別的になります。しかしながら、高齢社員の人事管理は現役社員を支援・補佐する位置づけですので、役割は現役社員ほど明確になっておらず人事評価は行われていません。それは処遇の面からも確認でき、高齢社員の処遇(月例賃金と賞与)は全員一律です。すなわち、高齢社員は退職時の役職や社内資格にかかわらず、全員同一金額で再雇用されているのです。現役社員は仕事の成果が処遇に反映されるので、モチベーションが高いのに対して、高齢社員は退職時の役職や社内資格にかかわらず全員同一金額であるのに加え、仕事の成果が処遇に反映されることもないので、モチベーションは低くなってしまいます。するには、どのような取組みが必要でしょうか。ここでは「人事管理の公平性(社員の仕事の成果を「適切」に評価し、処遇に反映する基本的な考え)」の観点から考えてみたいと思います。認していきたいと思います。社員に占める高齢者の割合が高まりつつあるなか、事業活動を展開するうえで、長年の職業人生を通して蓄積してきたスキルや経験などを持つ高齢社員は、多くの企業にとって重要な戦力であり、不可欠な存在になっています。少子高齢化のなかで、今後とも高齢社員の戦力化を進めていくことになるでしょう。高齢社員のモチベーション低下の問題を解決まず企業における高齢社員の位置づけから確こうした高齢社員の人事管理の仕組みを考えマンガに出てくるJEEDシステム株式会社(情報通信業)では、60歳定年・希望者全員仕事に対するやる気もなく、毎日社内をフラフラしています。その態度に、人事課に異動してきたばかりの羽鳥さんも呆■れているようです。継続雇用した高齢社員(60歳以上の社員)の人事管理で、企業が悩みを抱える問題の一つに、「高齢社員のモチベーションの低下」があげられています。現役社員(59歳以下の社員)時代は一生懸命仕事に取り組んでいたので、継続雇用後の活躍も期待していたのに、その期待が外れてしまい、人事担当者は頭を抱えてしまう。こうした悩みを耳にします。そこで、まず企業が期待していた高齢社員のモチベーションが低下してしまった原因を考えてみたいと思います。ここでポイントとなるのは、現役社員と高齢社員の人事管理の仕組みの違いです。図表1は、一般的な企業の高齢社員(再雇用)の人事管理の仕組みを「役割の明確化」、「人事評価」、「処遇(賃金)」の三つの視点から整理したものです。現役社員は企業によって中核的な業務をにな現役社員高齢社員○△高低■■実施なし月例賃金個別的全員一律昇給実施なし賞与個別的全員一律役割の明確化人事評価人事管理の個別施策処遇(賃金)社員のモチベーションエルダー13※筆者作成65歳まで再雇用する制度を導入しています。しかし、総務部で働く再雇用社員の鼠■■見さんは、特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門図表1  現役社員と高齢社員(再雇用)の人事管理の違い

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