エルダー2020年8月号
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「65歳超の就業機会確保措置」の人事管理の仕組みを考える出典: (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(2020)『65歳超雇用推進事例集2020』を一部修正組みを適用することが、人事管理の公平性の観点から求められます。しかし、ここで注意しなければならないのが、現在の現役社員の人事管理は「60歳定年」を前提に設計されているということです。そのため、多くの企業は賃金や仕事、役職などの課題から、定年年齢をそのまま「60歳」から「70歳(あるいは定年廃止)」に変更することは組織運営の観点からむずかしいと考え、70歳定年(あるいは定年廃止)を前提にした人事管理の仕組みの構築が求められます。一方、現役社員支援型の場合には多様な措置のなかからどの措置にするかを決めなければなりません。その際に65歳定年引上げを65歳超の就業機会確保とセットで行うか否かを決める必要があります。旧高齢法の経過措置移行期間が2025年3月31日で終了し、その後は65歳までの雇用確保が義務化されますので、いずれ65歳定年引上げの議論が始まることになるでしょう。マンガの会社のように、「60歳定年、65歳まで再雇用」に加えて、「65歳超の就業機会確保措置」を設けたとしても、その後に65歳定年引上げを検討しなければなりません。来年4月から施行される新高齢法を機に「65歳定年引上げ」と「65歳超の就業機会確保措置」を「セット方式」で行うか、それともはじめに「65歳超の就業機会確保措置」を新設して、その後に「65歳定年引上げ」を行う「二段階方式」で行うかを決めることが求められます。どちらの方式を採るかは高齢社員活用の基本方針と同じように、企業経営における高齢社員の位置づけや、企業が置かれる経営環境によって異なります。なお、セット方式における65歳定年引上げについては、70歳定年引上げと同じ対応が求められます。最後に「65歳超の就業機会確保措置」の人事管理の仕組みですが、新高齢法では70歳までの就業機会確保措置には従来の継続雇用制度以外にも、他の企業(子会社・関連会社以外)への再就職、個人とのフリーランス契約への資金提供、個人の起業支援、社会貢献活動への資金提供といった多様なタイプがありますので、そのなかから企業が置かれている経営環境をふまえてタイプを決めることが求められます。従来の継続雇用制度を採る場合には、高齢社員のモチベーションを高めるためにも、人事管理の公平性の観点から現役社員と同じように期待する役割を明確にし、そして仕事の成果を適切に評価し、処遇に反映することが求められます。それに対して、新高齢法で示された新たな措置を採る場合には、上記の対応とは異なる対応が求められます。高齢社員は自社内(子会社・関連会社を含む)で働くことを前提にしていましたが、新たな措置の場合には社外で活躍することになるからです。高齢社員は雇用されうる知識・スキルなどを身につけておくことが必要になり、そのための支援体制の整備・拡充が企業に求められます。また自社内ではなく社外で活躍してもらうことを重視する場合には、キャリア形成のあり方にも影響を与えることになり、場合によっては人事管理の仕組み自体の見直しが必要になることが考えられます。整備の事例として医療法人Aの取組みを紹介します。こうした役割の明確化と適正な評価や処遇の医療法人Aは、人材確保とベテラン職員のノウハウの継承を目的に、定年年齢を60歳から65歳に、継続雇用制度の上限年齢を65歳から70歳に引き上げました。基本給は定年時の賃金水準が維持され、昇給は行われません(医師を除く)。賞与は現役社員と同じで、人事評価は現役社員と同じ賞与査定のみを行っています。医療法人Aの事例: 定年・継続雇用年齢を引き上げ、人事制度もそのまま15エルダー特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門

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