失敗の原因は高齢社員の活用方針に連動した支援体制の整備・拡充不足トラブルの要因が現状です。そのため、現役時と継続雇用後の仕事内容とのギャップに不安を引き起こし、新しい役割に適応できず、仕事への意欲やモチベーションなどを失ってしまう高齢社員が出てしまうことが考えられます。マンガに登場する高齢社員は再雇用後、定年前とは異なる職場(コールセンター)に配属され、異なる仕事(問合せ業務)に従事するようになったため、新しい環境に適応できず、現役社員時代のように仕事への意欲やモチベーションを持つことができなくなってしまっているのではないでしょうか。ここでポイントとなるのは、高齢社員活用の基本方針に連動したキャリア支援体制の整備・拡充不足です。高齢社員の活用方針とキャリア支援体制の変遷の概要を整理した図表1を見てください。昭和期は現在と比べ全社員に占める高齢社員の比率が低く、定年後も引き続き仕事を続けることを希望する高齢社員が少ない状況にありました。政府の高齢者雇用政策に協力するため、企業は活用方針としてこれまで長年にわたり会社に貢献してきた高齢社員を継続雇用する福祉的雇用(戦力として仕事の成果を出して経営業績に貢献することは重要視せずに雇用する考え)が採られていました。対象者がかぎられていたため、高齢社員が従事する職務開発は限定的でキャリア教育や仕事に必要な能力開発は積極的に行われていませんでした。大きく変わりました。高年齢者雇用安定法の改正による65歳までの雇用確保措置の義務化と少平成期に入ると高齢者雇用を取り巻く環境は寅■谷■さんは、昨年定年退職し再雇用されました。再雇用後に配属されたのはコールセンター。■■低高■■○■高■■マンガに出てくるJEEDシステム株式会社で、定年まで営業事務の仕事を担当していたところが寅谷さん、コールセンターでの新しい仕事を覚える気がないようです。会社に勤める人にとって、定年は40年近く歩んできたキャリアにおける、大きな節目となります。年金支給開始年齢引上げ前までは定年を機に職業人生を終えて、自分の趣味や家族の介護など個人の生活を過ごす人が多く見られていましたが、その引上げの施行やライフスタイルの多様化などにより、定年後も継続雇用で働く高齢社員が一般的になりました。高齢社員にとって継続雇用後の仕事は定年前の仕事を続けることが理想的です。それまでつちかってきた知識や経験、技能を活かせるので安心して、その力を発揮できるからです。しかし、人材活用方針などの組織運営の関係上、高齢社員全員の継続雇用後も定年前と同じ仕事にすること(例えば、定年後も引き続き管理職を継続すること)はむずかしく、(個人によって内容や程度に差はありますが)条件が変わるの昭和期福祉的雇用職務開発キャリア教育等平成期令和期さらに戦力化移行期戦力化社員に占める高齢社員比率高齢社員の活用方針キャリア支援体制17※筆者作成エルダー図表1 高齢社員の活用方針とキャリア支援体制の変遷特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門
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