ためのキャリア支援体制の見直し活躍している40代から定期的にキャリア教育を実施することが必要になります。(2)教育訓練体系次に教育訓練体系についてですが、これまで管理職向けの業務にかかわるおもな研修は、管理職として必要なマネジメント能力やリーダーシップなどの習得・向上を目的とした研修でした。しかし、「くだりのあるキャリア」に対応したキャリア教育での能力の棚卸しとライン業務に必要な能力の更新、すなわち定年前に管理職を離れ一般社員等として従事するライン業務に必要な知識や能力などを、現役社員時代から磨いておくことが必要になりますので、管理職、高齢社員も必要に応じて受講できる教育訓練体系に見直すことが求められます。また業務スキルの習得・向上に関する自己啓発支援についても、受講対象者を若手や中堅社員などに限定している場合にはそれをなくして、管理職や高齢社員も参加できるようにすることも求められます。こうしたキャリア支援の事例としてB社の取組みを紹介します。この事例の特徴は外部機関が開発した診断ツールを用いて定年以降も活き活き働くための能力診断を社員に実施している点です。電子部品製造業のB社は、入社時から社員にキャリアを考えてもらう機会を定期的に実施しています。特に50歳到達者を対象とした「キャリア研修」では、定年以降も活き活き働き続けるために高齢社員に共通して求められる能力の理解と習得をねらいとして、中央職業能力開発協会(JAVADA)が開発した能力診断ツールなどを用いて、60歳以降に期待される役割の明確化とそれにともなって必要となる意識の切り替えに重点を置いた内容の研修を実施しています。(1)キャリア教育の実施・拡充こうしたキャリア・プランの見直しは、「のぼるキャリア」を前提に整備されているキャリア支援体制、特にキャリア教育、教育訓練体系の見直しが必要になります。まずキャリア教育については、これまでの「のぼるキャリア」では管理職を目ざすことが社員の間で共有されていたので、キャリア教育を行う必要性が低く、行うとしても定年後のキャリアや生活設計などを考えることを目的としたライフプラン研修が中心でした。しかし「くだりのあるキャリア」のもとでは、これまでの福祉的雇用における仕事への取組み意識からの転換を図ること、そして戦力として活躍してもらうための能力の棚卸しが必要になります(もちろん、解説1で紹介したように、評価・処遇の見直しをセットで取り組むことが必要になります)。また、こうしたキャリア教育をいつから行うかという、キャリア教育の実施時期の問題もあります。役職定年の定年年齢は一般に50代半ばから始まりますし、キャリア形成のあり方が大きく変わりますので、50代になってから始めるのではなく、会社の第一線でB社の事例: 定年以降も活き活き働くための能力診断を実施対象者25歳入社10年目(32歳)キャリアの自覚促進と、方向性の明確化キャリア開発の理解ねらいキャリア開発と内的キャリア、3年後のキャリアプラン構築内容出典: (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(2018)『エルダー』2018年2月号を一部修正年度内に50歳を迎える社員全員定年以降も活き活き働き続けるため、シニアに共通して求められる能力の理解と習得キャリアアンカー、10年後のキャリアビジョン構築、行動計画作成等雇用延長時に求められる役割とキャリア・シフトチェンジの必要性理解。キャリア・シフトチェンジに必要なプラットフォーム能力の理解等58歳到達者定年後の再雇用への準備定年後の生活設計、健康管理、生きがいづくり再雇用制度の確認、マネープラン19エルダー特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門B社におけるキャリア開発に関する研修の概要56歳到達者マネー、健康、生きがいの理解70歳まで戦力として活躍してもらう
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