エルダー2020年8月号
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はじめに 0トラブルの要因す。「腰が痛いにもかかわらず、重たいものを持ち上げなければならない」、「膝が痛いにもかかわらず、立ち座り作業をくり返さなければならない」といったことは、生産性の面からも、本人の労働意欲や生活機能面においても多大な損失につながります。〝運動―老化サイクル〟のモデルがヒントになります(図表2)。年齢が増加することにより、運動が不足し、そのことが身体能力を低下させ、さらに社会的、心理的な老化につながり、身体活動がさらに低下し……と続くこのモデルから考えると、生活のなかで運動を取り入れ、身体活動量を維持することの重要性が示唆されます。ことが社会的・心理的な老化につながる点も注目すべきです。社会的な老化が進むことにより、次に、より大きな視点で問題を考えてみると、また、身体能力が低下することにより、そのマンガのJEEDシステム株式会社総務部では、複数の高齢社員が働いています。デスクワークとはいえ、なかには腰痛や関節痛などを抱えながら仕事をしている人もおり、業務に支障が出るほどの疾患を抱えている人も。メンタル不調に陥る高齢社員もおり、羽鳥さんをはじめとした若手社員に負担が集中してしまうこともあるようです。健康や体力についての不安や主訴は、年齢が上がるにつれて顕在化する場合があります。2016(平成28)年の国民生活基礎調査の報告によると、病気やけがなどの自覚症状のある者(有訴者)の割合は、千人あたり、20代では209・2人であるのに対し、50代では308・8人、60代では352・8人と、年齢とともに増加する傾向が見られます(図表1)。マンガのなかで腰痛や関節痛に悩む人が登場していましたが、実際の調査においても、腰痛や肩こり、関節痛は男女ともに上位5症状に含まれています。では、どのような取組みが必要となるのでしょうか。まず目の前の対策として、身体的な主訴がある場合には、その主訴が作業や作業環境によって増悪することを防ぐことが必要になってきま(人)60050040030020010020代30代総数出典:厚生労働省「国民生活基礎調査(2016年)」のデータからグラフ化40代50代60代女性男性運動不足70代25出典:『加齢と運動の生理学』(朝倉書店)p.11よりエルダー図表1 病気やケガなどの自覚症状のある者の割合(千人あたり)年齢の増加身体能力の低下209.2352.8308.8特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門図表2 運動―老化サイクル身体的劣化身体活動のさらなる低下社会的、心理的な老化

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