具体的な健康対策とは []人とのつながりや集団での生産活動への意欲が低下し、抑うつ傾向になることを避けなければなりません。職場において心身両面に対する適度な負荷は、ある意味、健康な生活を送るための必要条件であり、労働生活が60歳から65歳へ、さらに70歳へと延伸することが期待される現在の日本にとって、高齢期の労働生活の価値を再評価し、健康と労働の調和を目ざしていくことが、何よりも重要な取組みになります。では、具体的にどのような取組みが必要になるのかを考えてみたいと思います。■筋骨格系主訴に対して筋骨格系主訴の場合、痛みの原因に対するアプローチと職場環境の改善に対するアプローチが考えられます。痛みの原因が変形性関節症のような整形外科的要因に起因する場合は医療機関の受診がすすめられ、適切な治療により症状をコントロールすることが肝要です。内科的疾患の可能性もあることから、自己判断によらず、専門的な診断を受けることが第一だと思います。その際には、後述の〝両立支援〟についても参考にしてください。具■・工具などの重さや形状、作業手順などを見職場環境の改善については、局所的な負荷を減らすため、作業中の姿勢や作業に用いる治■直し、作業者の特性に合わせる取組みを行いましょう。その際には、安全面への配慮も含め、中央労働災害防止協会の『エイジアクション100』※1のようなチェックリストを用いることをおすすめします。■慢性疾患に対して慢性疾患の場合、服薬や日常の体調管理(体温や血圧などの測定を含む)が重要になります。病状や仕事への影響について、主治医と職場の産業保健スタッフとの連携関係が構築されることが理想的です。そのためには、いわゆる〝両立支援(治療と職業生活の両立)〟に対する理解を職場で深めていくことから始められてはいかがでしょうか。厚生労働省『治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会報告書』によると、両立支援とは「病気を抱えながらも、働く意欲・能力のある労働者が、仕事を理由として治療機会を逃すことなく、また治療の必要性を理由として職業生活の継続を妨げられることなく、適切な治療を受けながら、生き生きと就労を続けられること」とされており、当該研究班より、両立支援を進めるためのガイドブック(産業医・産業保健スタッフ向け※2、主治医向け※3、企業経営者・人事担当者向け※4)も公開されています。■メンタルヘルスに対して統計情報として、2017年の『患者調査』のデータのうち、「気分を含む)」および「神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害」の患者数を年齢階級別にみますと、「45〜54歳」で高値を示した後、減少傾向がみられます(図表3)。また、性差の影響もあり、男性よりも女性の方がメンタルヘルスに関連する疾患の患者数は多い傾向があります(図表4)。産業保健分野に特化した報告においては、中高年労働者のストレスやメンタルヘルスの特徴として、「役割や地位の変化による悩み」があり、「相談相手が見つけにくい」ことがあげられています※5。や睡眠」にかかわる生活要因の影響から元気さが失われることも想定されます。このことについては、老齢医学の領域においてモデル化されており(図表5)、加齢による生体恒常性(体内の状態を一定に保つ仕組み、ホメオスタシスとも呼ばれる)の低下に、活動性の低下や疾患、※1 中央労働災害防止協会『エイジアクション100』https://www.jisha.or.jp/research/ageaction100/index.html※2 順天堂大学医学部衛生学講座「産業医・産業保健スタッフのための主治医・医療機関との連携ガイド」 http://plaza.umin.ac.jp/~j-eisei/renkei/guide%20A.pdf※3 順天堂大学医学部衛生学講座「主治医・プライマリケア医のための産業医・患者の職場との連携ガイド」 http://plaza.umin.ac.jp/~j-eisei/renkei/guide%20B.pdf中高齢期におけるメンタルヘルスについての感情また、マンガのなかに登場したような「食欲障害(躁うつ病2020.826
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