オクラに含まれる成分を「ムチン」と表記しておりましたが、誤りであることが判明しましたので、お詫びいたします。なお、当該表記につきましては、当時の執筆者の見解であることをお断りいたします。31エルダー食文化史研究家● 永山久夫オクラは、生の状態でも食感が納豆にそっくり。刻んで、カツオ節をまぶし、醤油をかけてかき混ぜて、ご飯にかけて食べると、ネバネバ、ツルツルとのどごしがよく、実にうまくて3杯は軽い。空腹のときだったら、もっと食べられます。オクラの原産地はアフリカ北東部で、古代文明の栄えたエジプトでは、紀元前からつくられていたそうです。世界の三大美女のひとりであるクレオパトラも、美容食としてオクラでとろみをつけた肉スープを、愛飲していたと伝えられています。骨付きの鳥肉をじっくりと煮込んでコラーゲンをとり出し、そこへオクラを入れることで、ネバネバ・トロトロ成分のムチンやビタミンCを加え、肌の若さと美しい容貌を維持するために、役立たせていたのではないでしょうか。クレオパトラと関係があるからなのでしょうか、「レディー・フィンガー(貴婦人の指)」という、小粋なネーミングもあります。オクラは、味や機能性のユニークさから、ヨーロッパやアメリカなどで広く普及していき、明治の初めのころに、アメリカから日本に渡来しています。そのときの英語名である「OKRA」がそのまま日本名となりました。独特のネバネバはムチンやペクチンなどの成分で、水溶性の食物繊維であり、腸内の善玉菌を増やして、免疫力を強化する作用があります。食後の血糖値の上昇を抑えて、お通じを整える働きがあることもわかっています。整腸作用に加えて、スタミナ強化作用もあり、夏バテによる体力回復にも役立ってきました。暑い夏に増えやすい活性酸素の害を防ぐ抗酸化効果の高いカロテンやビタミンE、ビタミンCが多く、暑さを乗り切るためにも注目の食材です。みじん切りにしたオクラを卵の黄身に混ぜ、もみ海苔をふりかけて、醤油で味をつけワサビを添えると、「黄身おとし」という絶品料理になります。また、オクラと山イモをすりおろして混ぜると、緑色の美しいとろろ料理に。これもワサビともみ海苔をかけ、醤油で味を整え、ご飯にかけると、立派な「長寿どんぶり」のでき上がりです。クレオパトラの肉スープスタミナ強化にも役立つ黄身おとしFOOD322日本史にみる長寿食オクラのネバネバうまし
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