1前回の連載では、高齢社員の賃金を考えるにあたっては、以下の三つの視点を持つことが重要であることを強調しました。第一は、「あるべき賃金」は会社の人材活用の考え方(以下、「活用戦略」)に沿って決める、第二は、「あるべき賃金」は「賃金の基本」をふまえて設計するという視点です。これら二つはどの社員にも適用される原則ともいえる視点なので、高齢社員でも考慮される必要があります。第三は、高齢社員の賃金は会社全体の賃金の一部である、つまり高齢社員の「あるべき賃金」は高齢社員のみを見るのでなく、社員全体を見て考えるという視点です。特に企業はいま、女性社員や非正社員などが増えるなかで、「社員の多様化」に対応する賃金の構築が求められています。高齢社員の「あるべき賃金」はそれとの関連のなかで検討される必要があります。連載はこれら三つの視点に沿って進めますが、今回取り上げるのは第一の視点です。この視点が重視していることは、賃金は活用戦略に合わせて決めるべきということなので、高齢社員の「あるべき賃金」の検討は賃金からではなく活用戦略から始めることが必要です。さらに、これは、育成や活用の仕方の違いによって社員を複数のタイプに区分し、異なるタイプの社員には異なる人事管理(もちろん、このなかには賃金も含まれます)を適用するという人事管理の基本原則に沿った考え方です。以上の点に関連していま最も問題になってい第2回 高齢者雇用を推進するうえで重要な課題となるのが高齢社員の賃金制度です。豊富な知識や経験を持つ高齢社員に戦力として活躍してもらうためには、高齢社員の能力や貢献を適切に評価・処遇し、高いモチベーションを持って働いてもらうことが不可欠となります。本連載では、高齢社員戦力化のための賃金戦略について、今野浩一郎氏が解説します。高齢社員のはじめに〜賃金の前に「活用の明確化」を〜高齢社員の活用戦略は「需要サイド型」に いま の 学習院大学名誉教授学習院さくらアカデミー長 今野浩一郎2020.846
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