るのは、前回の連載でも取りあげた正社員と非正社員の賃金です。正社員は管理職などの幹部社員になることを期待して、長期的な観点から育成し基幹的業務で活用する社員。非正社員は特定の定型業務を継続的に担当する社員。正社員と非正社員の活用戦略をこのように設定すると、両者にはそれに合った異なるタイプの賃金が適用される必要があります。例えば、正社員の場合には、長期的に幹部社員に向かって能力を高めることが大切なので能力に合わせて賃金を決める、非正社員の場合には、担当する業務が明確なので仕事内容に合わせて賃金を決めるというのが適切かもしれません。高齢社員の活用戦略を考えるには、まずは活用の現状を理解しておく必要があります。それは、現状の何に問題があり、その問題を解決して、あるべき方向に向かうには何をすべきかを考える必要があるからです。高齢社員の人事管理の基本骨格は高年齢者雇用安定法が求める「希望者全員を65歳まで雇用する」に規定されます。具体的には、「定年制を廃止するのか」、「定年年齢を65歳超に引き上げるのか」、「定年年齢を65歳以下に設定し、その後は継続雇用で対応するのか」の選択になり、どれを選択するかによって人事管理の基本骨格が決まります。多くの企業は「60歳定年後に再雇用し、65歳まで有期契約社員(つまり非正社員)として雇用する」(「60歳定年+再雇用」)という継続雇用の方法を採り、そのもとで、定年前の正社員(以下、「現役社員」)と定年後の高齢社員に異なる人事管理を適用しています。このため、同じ企業のなかに現役社員用の人事管理と高齢社員用の人事管理が共存するので、現状の人事管理は「一国二制度型」と呼べる人事管理になります。現役社員と高齢社員は社員タイプが異なるので、前述の「異なるタイプの社員には異なる人事管理を適用する」の基本原則に立てば、「一国二制度型」を採ることには合理性があるといえますが、問題はその内容です。多くの企業が採ってきた「一国二制度型」の平均的な人事管理像は次のようになります。職責が低下する、評価がない、働きぶりが賃金に反映されないなどからわかるように、この人事管理像は、企業が高齢社員に対して「成果を期待しない」活用戦略を採ってきたことを示しています。ですから賃金は、この活用戦略に合わせて働きぶりを反映しない賃金として設計されているのです。経営に対する貢献(つまり成果を上げること)を期待して社員を雇用するのが雇用です。このことからすると、高齢社員の「成果を期待しない」雇用は雇用とはいえず、「希望者全員を65歳まで雇用する」という法的要請に対応するためにやむを得ず雇用する、「福祉的雇用」と呼ぶにふさわしい雇用です。企業がこうした「福祉的雇用」型の人事管理を採れば、高齢社員はそれに合わせて働くことになり、とうてい労働意欲の高い高齢社員を期待することはできません。この状況はかなり改善されつつありますが、まだまだ企業の取組みは十分ではありません。それは高齢社員が大きな社員集団化しているという状況に対応できていないからです。大きな社員集団化した高齢社■現状の雇用は「福祉的雇用」■活用戦略は「戦力化する覚悟」から「福祉的雇用」型人事管理の限界① 現役社員時代と同種の業務に従事するが、② 転勤、残業がないなど、働く場所、働く時職責や期待成果は低下する間、仕事内容から見て働き方は制約化する③ 評価はなく、賃金は定年直前の一律減の水準になり、働きぶりが反映されない47エルダー高齢社員の2
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