齢社員の何の能力を活用したいのか」を明確にし、それに合った人材を高齢社員から探すことが必要です。もちろん高齢社員には「会社に自分の何を売るのか」、つまり「会社にどのような能力をもって、どのように貢献するのか」を考えてもらう必要があります。この会社と高齢社員のニーズを擦り合わせて配置を決める。これをどの程度上手にできるかが、企業が高齢社員を戦力として活用する、高齢社員が高い労働意欲をもって活躍する鍵になります。次に以上の視点に立つと、どのような活用方法が望ましいのかを考えてみます。これまで蓄積してきた経験と能力を活かすために、現役時代と同じ分野の仕事に配置する現職継続型の活用方法を採る。企業にとっても高齢社員にとっても最も効果的な方法です。しかも高齢社員が少数の場合には他分野の仕事に配置する方法を基本とすることも考えられますが、高齢社員が多くなるほどそれはむずかしく、現職継続型が基本にならざるを得ません。そうなると、職場責任者が人事部門の支援を得ながら個別に対応するということになります。そのときに職場責任者は、①「職場では、どのような問題に対応するために、どのような(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構が日本人材が必要なのか」の人材ニーズを精査する、②高齢社員の働くニーズ、つまり仕事と働き方の希望を把握する、③職場の人材ニーズと高齢社員の働くニーズを擦■り合わせる、という手順を採って配置を決めることが必要です。また両者のニーズが一致しない場合が多いので、擦り合わせの際には、高齢社員には人材ニーズに合わせて働くニーズを調整してもらうことが必要になります。そのためには、どのような業務なのか、その背景には何があるのか、なぜ働くニーズを調整してもらう必要があるのかなどについて、職場責任者は高齢社員にていねいに説明し、話し合うことが必要です。さらに高齢社員は自分の経験、スキルを理解したうえで、職場の業務ニーズにどう貢献するかを考え、提示することが必要です。企業には高齢社員がこの行動を採れるように支援することが求められ、それを検討するにあたっては、電子デバイス産業協会に委託して開発した、①会社・職場による業務上の課題のリストアップ、②高齢社員による課題の選択、③当該課題にどう取り組むかの検討と提案、④それを通しての「使えるスキル」の自己認識の4段階からなる『シニア期の「使えるスキル」発見法』の研修プログラムの考え方が参考になります(同協会「電子デバイス産業における高齢者雇用推進ガイドライン」2019年を参照※)。高齢社員の活用を決めるにあたっては、以上の職場責任者による個別対応が基本になりますが、制度的に対応する企業もあります。その典型的な方法は高齢社員版の社内公募制度です。すべての高齢社員の配置を社内公募で決めている企業もありますし、基本は上記の個別対応ですが、それを補完する方法として社内公募を活用する企業もあります。さらに、ほかの職場、ほかの企業の仕事に挑戦する場合などに、事前に仕事の内容を知ってもらうためにインターン制度を導入している企業もあります。今回は「賃金の前に、どう活用するかを明確にする」の原則にしたがって、活用戦略を検討する際のポイントについて説明しました。高齢社員の賃金を見直したいと考えている読者は、高齢社員の雇用の現状を点検したうえで、まずは、これらのポイントに沿って活用戦略を検討してみてください。賃金はそれからです。■活用方法の基本検索49※ https://www.jeed.or.jp/elderly/research/enterprise/devicer1.htmlエルダーJEED 電子デバイス ガイドライン高齢社員の
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