エルダー2020年8月号
53/68

個人情報の取扱いにおける例外について感染症の発症者またはその疑いについて社内公表について同意なく、第三者へ提供をすることができないとされています(同法第23条)。したがって、原則に従う場合には、新型コロナウイルスに感染したという情報を特定の個人と結びつけた場合、取得することや第三者提供を行う際には、同意が必要ということになります。2要配慮個人情報の取得や個人情報の第三者提供において、同意が得られない場合であっても、取得または第三者提供ができる例外が定められています(同法第23条1項)。主な例外事由は、①人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき、②公衆衛生の向上のために特に必要な場合で本人の同意を得ることが困難であるとき、があります。したがって、これらの場合には、例外的に、本人の同意が獲得できない場合であっても、取得または第三者提供が可能となります。3感染症の発症が確定している場合には、明確に病歴に該当し、要配慮個人情報となります。また、感染疑いの場合には、病歴そのものではありませんが、厚生労働省が公表する「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(以下、「健康情報指針」)においては、「健康情報」として、「健康診断の結果、病歴、その他健康に関するもの」と定めており、確定的な病歴診断にかぎらず、広く健康に関するものを含む定義としています。感染症の疑いが本人に対して不当な差別や偏見を生じさせるおそれがあることをふまえると、プライバシー性の高い「健康情報」として、要配慮個人情報と同程度に扱うことが適当と考えられます。要配慮個人情報であっても取得においては、感染力の強さをふまえて判断する必要がありますが、新型コロナウイルスのように感染力が強い場合には、「①人の生命・身体の保護のために必要」といえるでしょう。また、健康情報指針においては、感染したり、蔓延したりする可能性が低い感染症に関する情報は、特別な必要がある場合を除き、取得すべきではないとされていますが、反対解釈をすれば、感染力が強い場合には、取得が許容されることがあると解釈することができます。感染症の発症またはその疑いに関する情報を取得する際には、原則として同意を得ることが必要ですが、感染力の強さなどからすると、同意を得ることが困難である場合には、個人情報保護法の例外事由に該当するものとして、取得することが可能と考えられます。には、「本人の同意を得ることが困難」であることが前提であるため、まずは、本人の同意を得る努力を尽くすべきであり、隔離措置などにより本人との連絡が取れない状況にあることを記録に残しておくことは必要でしょう。4社が「新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目的とした個人データの取扱いについて」と題する文書を公表しています。内公表することの可否について、第三者提供に該当しないため、本人の同意が不要であるとしています。この背景には、会社が従業員に対して適法に取得した個人情報を提供すること自体は、会社による自己利用にすぎず、第三者提供には含まれないという解釈があります。護法の規制対象外であるとしても、感染者またはその疑いなどの情報に対するプライバシー性も加味して、公表内容については慎重に吟味する必要があります。個人情報保護法を遵守したからといって、プライバシー侵害(不法行為)に該当しないとはかぎらないかただし、これらの例外事由に該当するため内公表に関しては、個人情報保護委員会社員に感染者や濃厚接触者が出た場合に社しかしながら、社内への公表が個人情報保51エルダー知っておきたい労働法AA&&Q

元のページ  ../index.html#53

このブックを見る