退職金の種類はさまざま第3回目に取り上げるのは「退職金」です。昨年、金融庁金融審議会のワーキング・グループの報告書(「高齢社会における資産形成・管理」)をめぐって、〝老後2千万円〟問題として話題になりました。また老後の生活資金の問題について書かれている書籍もたくさんあり、平均寿命の延びに合わせて、退職後の資金についての関心が高まっていることは間違いなさそうです。退職金とは、退職した社員に支給されるものであることは読んで字の通りなのですが、種類は多岐にわたります。細かい制度区分を説明すると複雑になるので、基本的なところをおさえておきたいと思います。①支給方法「退職一時金」と「退職年金」の二つの方法があります。一時金の方は一括で支給されるもの、年金は分割で支給されるものです。一般的には高額の退職金を退職時に一気に受け取るイメージで語られており、統計上も一時金で支給している会社が7割程度で、年金のみで支給している会社はわずかです。ただし、一時金と年金を併用している会社も一定程度あります(図表)。一括支給だけだと、生活費ではなく臨時収入として早期に使い果たしてしまうこともあり、併用の方が社員の生活設計に配慮した支給方法といえます。②積立・運用方法るわけではありません。一定のルールに従って積み立て、運用して退職金支給の準備をします。代表的なものとしては「確定給付」と「確定拠出(企業型)」があります。確定給付とは、あらかじめ将来の給付額を決定し、その給付額をまかなうために必要な掛金を企業が準備し、運用するものです。運用がうまくいかずに給付額が準備できなくなると、企業が補填する必要があります。一方、企業が準備するのは掛金のみ企業はその年に発生する退職金を毎年調達す8(4.9)88 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者ならおさえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。(単位:社、%)2020.854出典:東京都「中小企業の賃金・退職金事情」(2018年)図表 退職金の支給の方法株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之集計企業数制度あり1,060(100.0)756(71.3)〈100.0〉調査産業計〈75.9〉10〜49人618(100.0)398(64.4)〈100.0〉〈83.4〉50〜99人279(100.0)221(79.2)〈100.0〉〈71.0〉163(100.0)137(84.0)〈100.0〉100〜299人〈62.0〉退職退職一時金のみ一時金と退職年金の併用退職年金のみ制度なし無記入57415626256(24.2)〈20.6〉〈3.4〉3325610195(31.6)〈14.1〉〈2.5〉1575643(15.4)〈25.3〉〈3.6〉854418(11.0)〈32.1〉〈5.8〉48(4.5)25(4.0)15(5.4)第3回「退職金」■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典
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