退職金支給の意義は三つ☆■■■■なのが、確定拠出(企業型)です。こちらは、企業が準備した拠出額を社員個人が運用するため、給付額は個人の運用次第ということになります。確定給付とは異なり、運用がうまくいかなかった分を企業が補填する必要がないため、企業の負担は軽くなります。社員にとっても個人別の口座で運用するので、定年前に退職しても個人型の確定拠出年金(i■DeCo)や転職先の企業が確定拠出(企業型)の制度を有している場合、その資金を移管して運用し続けられるメリットもあります。なお、確定拠出(企業型)は2001(平成13)年に開始された制度で歴史は浅いですが、2018年時点での東京都の導入状況を見てみると、45・1%と、確定給付型44・5%に対して拮■抗■しています(東京都「中小企業の賃金・退職金事情」2018年)。③算定方法退職金算定方法の基本形は、勤続期間連動です。勤続期間が長い=積立期間が長いため、長く勤務したほうが退職金の額が大きくなるのが一般的です。そのため、算定方法としては退職時基本給に勤続年数や勤続年数ごとに設定された係数を乗じて計算する方法がかつては主流でした。しかし、基本給をベースアップした際に連動して退職金も上がってしまうなどの予期せぬ〝副作用〟もあり、基本給ではなく別の算定基礎額を使う「別テーブル方式」や、等級や役職によって毎年のポイントが決定し、その集計によって支給額が決定する「ポイント式」を用いたりするケースも増えています。さて、この退職金ですが、法律で支給が定められたものではありません。統計上、3割程度の会社が制度を有しておらず、企業規模が小さくなるほど導入率は低くなります(図表)。退職金の平均額は統計上、企業規模や学歴によって異なるのですが、例えば2018年の就労条件総合調査(厚生労働省)によると、35年以上勤務の一人あたり給付額は大学・大学院卒で、企業規模計で2173万円、100〜299人規模でも1785万円という金額にのぼります。この金額は、企業側にすると人件費上ではかなりの負担になるのは間違いないのですが、制度があること自体が当然で、なぜ退職金を支給するのかを考える機会は少ないと思われます。退職金支給の意義ですが、「生活保障」、「功労報奨」、「賃金後払い」の三つがあるといわれています。生活保障については、家族手当などと同様に社員の生活を会社が支えるという考えが根底にあります。功労報奨とは、勤続期間全体を会社への貢献とみなし、その還元を長期インセンティブとして退職時に行うというものです。賃金後払いについては、実務的には本来毎年支払うべき給与から一定額を拠出して、退職金用に積み立てていくという設計上の事情が背景にあります。このようにみると、日本の雇用の特徴といわれる「終身雇用」、「長期勤続」を前提とした制度であるといえます。そのため、ベンチャー企業などでは長期勤続を前提とせず、退職金制度を設けずに、掛金分を前払いとして、給与に乗せているケースもあります。報酬全般をとらえることはありません。若年層にしてみると、退職(特に定年退職)は遠い先の話であり、退職金の水準よりも単年度の年収が高い方が魅力的に映ります。一方、40歳を超えるあたりから、老後の生活設計を含めて退職金の額が初めて気になるくらいのものであり、退職金の意義が十分に伝わっていないことも否定できません。人生100年時代を見すえると、生涯報酬や老後の働き方とセットで退職金の在り方や支払い方も議論し、社員に伝達する必要があるのではないかと筆者は考えています。ついて解説する予定です。しかし、社員側が退職金を含めてトータルで☆ 次回は働き方全般にかかわる「キャリア」に55エルダー■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典
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