エルダー2020年9月号
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―9■■のなかには、時間があっても「仕事以外にやりたいことがわからない」という人が少なくありません。もう一つの問題はここです。ただ、そこで会社が「ご家族と一緒にご飯を食べなさい」とか、「自己啓発のために勉強しなさい」というのはおせっかいというものです。会社を出たら社員の時間なので、本来、会社がいうべきことではありません。働き方改革は会社が行うべきことですが、社員の生活改革仕事以外の生活も大事にして生活全体を豊かにすることは、社員が自分で考えなければならないのです。では、会社は何をすればよいのでしょうか。1 活動メニューの情報を提供一つは、自己啓発やボランティア活動など、いろいろな活動メニューを用意して提示することです。「これをやれ」と命じるのではなく、「こんなものもありますよ」と情報提供するわけです。社員同士の勉強会の場を用意して学び合えるようにしたり、サークル活動を支援するのもよいでしょう。2 「変化対応力」の重要性を周知もう一つ大事なのは、「会社にとって望ましい人はどういう人か」というメッセージを変えることです。これまではやはり、仕事第一の人が会社にとって望ましい人でした。これからは、仕事はもちろんがんばってもらう必要がありますが、それはいまの仕事だけではありません。環境変化が激しく、予測がむずかしい時代ですので、現在担当している仕事に必要な知識やスキルを身につけるだけでなく、将来の不測の変化に対応できる柔軟性、「変化対応力」が求められます。例えば、今回の新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの人が急遽、在宅勤務となりました。また、コロナの影響でビジネスモデルが大きく変わった業種もあります。そういう新しい環境にすぐ適用しようと努力する人がいる一方で、これまでのやり方から抜けられない人がいます。変化対応力を構成するのは、①社会経済環境やビジネスの変化に関心を持つ「知的好奇心」、②常に学び続ける「学習習慣」、③年齢にかかわらず新しいことに挑戦する「チャレンジ力」の三つです。これらを備えた変化対応力が、これからの時代を生き抜く糧になります。では、どうすればそれらの能力が身につくかというと、私たちの研究では、仕事だけをしていてはダメなのです。例えば、家にはほとんど寝に帰るだけという課長の男性。その人は課長という役割しかしておらず、課長に求められる価値観だけで動いています。それに対して、家庭では夫や父親の役割をにない、マンションの管理組合の理事長をし、ビジネススクールにも通っているという人は、自分のなかにいろいろな役割、いろいろな価値観が併存することになります。すると、時間やエネルギーなどの自分の資源を役割間で調整しないといけませんし、それぞれの役割の価値観が対立することもあります。例えば、ビジネススクールに行くと、そこでは受講生は部下とは異なり忖■度■してくれることはなく、同じ受講生というフラットな立場でコミュニケーションを取らないといけません。また、マンションの管理組合では合意形成を重視することが大事ですが、会社では、合意形成ができないときでも管理職が最終的には決断することが必要です。また、1日のうちで役割が変わったり、異なる価値観が自分のなかに入ることはたいへんですが、それが変化対応力を高めることにつながります。ちな課題として、仕事と介護、仕事と治療との両立の問題に触れておきましょう。1 直面する人が増えてきます。70歳まで会社で働ここで少し視点を変えて、高齢期に起こりが介護との両立支援両立支援に対する誤解特集高齢社員のワーク・ライフ・バランスエルダー40代も半ばを過ぎると、家族の介護の課題に

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