エルダー2020年9月号
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くことが一般的になると、介護の課題を抱える社員の比率が高くなっていくことが予想されます。また、未婚化・晩婚化により、未婚で親2人、あるいは子どものいない叔父・叔母の介護まで考えなければならない社員も増えてくるかもしれません。ここで大事なのは、「仕事と介護の両立支援」と「仕事と子育ての両立支援」は違うということです。子育て支援の場合は、簡単にいうと、男性も含めて、子育てができるように支援します。一方、介護支援の場合は、やや極端な表現ですが、介護しないで済むように支援するのです。介護というのは、育児と違っていつまで続くか見通しが立ちません。そこで自分が前面に出て介護をしてしまうと、仕事と両立できなくなる可能性があります。ではどうするかというと、要介護者に関して介護保険の要介護認定を受けて、介護保険制度のサービスを利用するための準備を早めにすることです。要介護認定のあとには、在宅介護のためにケアマネジャーを探し、自分が直接介護しなくてよい体制を整えます。その準備のために必要があれば、介護休業を取得します。こうしたやり方をするためには、長い休業もセーフティネットとしてあったほうがよいですが、それ以上に、休みたいときに休めるような働き方改革が有効です。あわせて、適切な情報提供をすることも心がけてください。多くの企業では、介護のための両立支援は子育てとの両立支援と違うということを人事担当者も理解していません。だから職場の管理職も、「うちは半年間介護休業が取れるから、それを使って親御さんの介護をしてきなさい」などと間違ったアドバイスをしてしまいがちです。社員のだれがいつ介護の問題に直面するかわかりませんので、一定年齢で社員の全員に情報提供することをおすすめします。2 治療との両立支援治療との両立も、子育てや介護との両立とは異なる点があります。一つは、事情を抱えているのが本人であること、もう一つは、がんなどの場合、ある程度快復した後も、長期にわたって治療が続くことです。多くの企業では病気休暇は整備されていますが、抗がん剤治療などで定期的に休む必要がありますので、介護の場合と同様、必要なときに休めるような働き方改革が重要です。また、キャリアプランの見直しが必要になることもあります。3〜4年と治療が続くので、「管理職を目ざそうと思っていたがむずかしい」とか、「海外勤務は無理」といったケースが考えられます。そこで落ち込むのではなく、自らの状態にあったキャリアチェンジができるように、社員をサポートしてあげてください。ンス」を育児や介護などの事情を抱えた人が辞めずに済むための支援策というように、狭くとらえてきました。しかし、今回説明したように、すべての人が仕事に取り組みながら、仕事以外のやりたいこともできるのが、本当の意味でのワーク・ライフ・バランスです。「働き方改革」についても、残業削減ととらえている企業が少なくありません。これは、社員の側も同じです。過度な残業を減らすだけでなく、社員の生活改革まで含めた働き方改革ができれば、「ビジネススクールに行きたいから、働き方を変えよう」、「家族と食事ができるように、仕事のやり方を見直そう」というように、社員が自ら働き方改革に取り組む好循環も生まれるでしょう。くために、ぜひ、「本当のワーク・ライフ・バランス」、「本当の働き方改革」に取り組んでください。これまで企業では、「ワーク・ライフ・バラ社員の退職後を含めた生活満足度を高めていおわりに2020.910

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