エルダー2020年9月号
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量労働制、事業場外みなし労働などの制度を利用することが必要となります。これに対して、テレワークでも請負・業務委託のような形で行う場合は、就業の場所だけでなく時間についても自由になるのが原則です。しかしながら、請負・業務委託であっても、例外的に時間に関する指定を受けることもありますので、必ずしも契約の形態だけではっきり区別がされるわけでもありません。このあたりについては、契約形態による境界が不明確なところでもありますので、簡単な図表をつくってみました。この図表のポイントとなるところは、そもそも雇用契約関係と請負・業務委託契約関係との境界は、契約の名称などにより明確な線引きができるものではなく、現実に、(指揮命令や評価・賃金決定システムなど)どのような就業管理が行われるかなどの、事実問題により決まるということです。そこで、この図のなかにテレワークやフレックスタイム制、裁量労働制度などが、時間や場所にどのような柔軟性をもたらすのかという関係を、概念的に示してみました。これらの関係からうかがえることは、テレワークやフレックスタイム制、裁量労働制などは、雇用契約の枠組みのなかでの柔軟化措置ではありますが、それらを拡大していけば、その実態として雇用契約関係が請負・業務委託契約関係に近づいていくということです。しかし、雇用の場合と異なり、請負・業務委託では、契約関係の継続性における安定性に欠けるという問題があります。このような観点から、高齢法においては、雇用確保措置と、就業確保措置や創業支援等措置とを別に規定し、雇用確保の義務履行の方策として、当然に代替できるものとはしていないと考えられます。係は明確な線引きができるものではなく、実態により境界が曖昧となり得るものですので、当事者がどのような意図で契約をしているかは別として、就業の柔軟性をどんどんと高めていくことは、事実上、雇用関係を離れ、請負・業務委託の関係に近づいていくということになるわけです。そこで、逆説的にはなりますが、就業の場所や時間の柔軟性を高めることを目的として、雇用ではなく、請負・業務委託の選択を就業者が自発的に行うことも、あながち不合理であるとはいえないと考えられます。安定性についての問題をクリアする必要があります。それには二つの方向性があると考えられます。一定期間の契約関係の存続を契約上保障することです。これについては、契約条項の工夫が必要とされるところですが、例えば、「65歳までの契約の継続を保証する」と端的に決めてしま一方、もともと雇用と請負・業務委託との関もちろん、就業者の選択をうながすためには、一つは、請負・業務委託関係とはいいながら、請負・業務委託雇用請負・業務委託制度の活用 図表 就業の場所・時間の柔軟性低い      就業場所の柔軟性      高い低い      就業時間の柔軟性      高いテレワーク裁量労働制・事業場外みなし時間制度フレックスタイム制度短時間勤務制度変形労働時間制度13出典:筆者作成

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