エルダー2020年9月号
16/68

うということも考えられますし、「契約を打ち切ることができる場合は、労働契約法第16条に定める要件を満たす場合とする」などとの規定とすることも考えられます。これらの内容については、できれば専門家の助言も得ながら、当事者間でも十分な理解に基づいた合意をすることが必要となります。他方では、そのような安定性については保証しない代わりに、それ以外の契約の内容や条件などを、雇用の場合よりも優遇されたものとして、その選択をうながすことも考えられます。この優遇措置が十分に合理的であれば、契約関係の安定性の程度が低いにしても、就業者において、就業条件の柔軟性とあわせ、このような就業形態を望むということはあり得るでしょう。定年後の再雇用の問題ではありませんが、株式会社タニタ(東京都板橋区)において、正社員のフリーランス化の制度を導入していることが報じられています。前述の通り、高齢者の状況は多様化していますので、人により、請負・業務委託とすることへのハードルは、このような正社員の場合よりさらに低いものであることが予想されます。そして就業者がこのような条件に満足できるならば、請負・業務委託の自発的選択は、高齢法上の雇用確保措置との関係でも問題のない制度であると考えられます。現行法上の雇用確保義務を果たすために、請負・業務委託制度を利用するには、法律上の義務の限界がどの辺にあるのかということについて、理解をしておく必要があります。この関係で見ておくべき判決の一つはトヨタ自動車事件(名古屋高裁平成28年9月28日判決)であり、定年前の業務内容と異なった業務内容を示すことは可能であるものの、継続雇用の実質を欠くような、大幅な変更は認められないとするものです。他方で長澤運輸事件(最高裁平成30年6月1日判決)では、定年後の有期雇用労働者と無期契約労働者の労働条件の相違の許容範囲を考えるうえで、定年後再雇用であることをその他の事情として考慮できるとしています。また、山梨県民信用組合事件(最高裁平成更については、「不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する」ことが必要であるとされています。えでは、フレックスタイム制やテレワークだけではなく、請負・業務委託までを含め、検討が可能であり、またその待遇などに関しても、どのような提案であれば継続雇用の実質が維持できているのか、就業者が納得のうえでその条件に合意しているのかなどについての慎重な考慮が必要とされます。そしてこのような措置は、業務の内容や事業の状況によっても変わり得るところですので、多面的多角的な検討および規則の整備などの具体的制度構築にあたっては、必要に応じて、法律専門家の適切な助言を得ることなども考えるべきでしょう。業規模が小さなところでは、就業者一人ひとりの個別状況に応じて協議・決定するとの対応も可能であろうと考えられますが、大規模事業所の場合については(適用については個別の配慮が必要であるにしても)、制度運用上および公平性の観点から、選択できる制度を事前に構築しておくことが必要となろうと考えられます。以上をふまえ、定年後の就業形態を考えるうちなみに、この具体的な適用に関しては、事雇用確保措置の内容との関係柔軟な勤務制度構築について1428年2月19日判決)では、重要な労働条件の変

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る