エルダー2020年9月号
18/68

うう ます。しかし、このような緊急事態のなかでも、平常時から一部でもテレワークを行っている企業は、大きな支障なく業務を遂行することができました。また効率や生産性が下がったと感じている企業も、テレワークが実施できなければ、多くの方が感染の危険にさらされ、自宅待機や休業を余儀なくされていたことでしょう。今後のBCP※4対策としても、労働力確保のための高齢者の就業促進のためにも、平常時からスムーズに活用できる本格的なテレワークの制度を構築することが求められています。テレワーク導入により、企業・就業者・社会の3者にとってさまざまな効果が期待できます。高齢者の働き方としては、定年を迎え体力的に自信のないシニア世代や、障害があり毎日の通勤が困難な人でも、在宅での業務が可能となれば、働く機会が増大します。テレワークを導入することで企業は労働力を確保できるうえに、働き方や雇用形態によってはコスト削減にもつながります。高齢者は、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら、仕事を継続することで収入を確保でき、企業も高齢者も互いにWin︲Winの関係を築くことができます(図表1)。一般社団法人日本テレワーク協会主催「テレワーク推進賞」において、2004(平成17)年度に第5回「会長賞」、2015年度に第16回「優秀賞」を受賞したNTTコム式会社(本社・東京都港区)は、人口減社会における労働力確保などの解決に貢献できる事業モデルとして、早い時期から高齢者雇用に取り組んできました。18年にテレワーク推進企業等厚生労働大臣表チェオ株彰(輝くテレワーク賞)「優秀賞」を受賞した味の素株式会社(本社・東京都中央区)では、多様な人材の活躍を推進するなかで、テレワークの対象として定年退職後のシニア社員の利用を推奨しています。この結果、2016年度比で定年退職後のシニア社員利用者は2・4倍(20人から48人)となり、テレワークの総実施回数は1・2倍となりました。年度に第19回「奨励賞」を受賞した株式会社タツミコーポレーション(東京都中央区)では、出産・育児・介護・定年などの理由で退職したOB・OGに在宅スタッフとして業務委託し、経験を要する「水回り部門」の見積り作成業務を独自のシステムを利用して行ってもらうことで、人材不足の課題を解消しています。2018年に総務省テレワーク先駆者百選総務大臣賞に選ばれた向こ洋よ電気土木株式会社(神奈川県横浜市)では、経験の浅い現場作業員がWebカメラを携帯し、70歳の高齢社員をはじめとするベテラン社員がWebカメラからの現場の映像を元に、遠隔地から作業指示をしていま2017年度第18回「会長賞」に加え、202015年度に第16回「優秀賞」、20182012年度に第13回「優秀賞」を受賞し、テレワークの効果図表1 テレワークのさまざまな効果・労働力の確保 (高齢者・女性の活用)・雇用の創出・地方・地域の活性化・環境負荷の低減・交通混雑の回避ⓒNSR All Rights Reserved・事業継続性確保(BCP)・意思決定の迅速化・業務効率の向上・離職防止(育児、介護)・障がい者雇用促進・オフィスコスト、交通費削減・ワーク・ライフ・バランス向上・育児、介護と仕事の両立・業務効率の向上・移動削減による時間創出・障がい者の就業・病気の治療との両立社会への効果 企業へのメリット就業者へのメリット2020.916※4 BCP…… 事業継続計画(Business Continuity Plan)。自然災害や感染症などの有事の際に、事業を中断させない、あるいは中断しても可能なかぎり短い期間で復旧させるための手順等をマニュアル化した計画のこと■テレワークとは 「情報通信技術(ICT)を活用した、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」 ※テレワーク:「tele=離れたところで」と「work=働く」をあわせた造語社 会企 業就業者企業、社会、就業者の3者にとってプラスの効果

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る