エルダー2020年9月号
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くゅは「自由」だと思います。ここでいう「自由」には二つの意味があります。一つは「自分のやりたいことをやる」という意味、そしてもう一つは「何ものにもとらわれない」という意味です。このうち、「自分のやりたいことをやる」というのは簡単にイメージできると思います。現代では働く人の約9割がサラリーマン※ですが、サラリーマンというのは「会社に自分の自由を売り渡す代わりに身分の安定を得る」という職業といってよいでしょう。私自身、サラリーマンを定年までやってきましたからこの感覚はよくわかります。私の場合は定年後に起業しましたので、だれからも指示されたり強制されたりすることなく、自分のやりたいことができることがいかに素晴らしいことかを実感しました。もちろん働くか働かないかも自由ですから、多くの人が定年後に憧れるのは「好きなことができる」という自由でしょう。もう一つの意味、「何ものにもとらわれない」というのはどういうことでしょう。これは別ないい方をすれば「呪じ縛ばから逃れる」ということです。サラリーマンであれば会社のなかの人間関係や取引先とのしがらみなど、なかなか逃れられない呪縛がたくさんあります。それらは会社を離れれば逃れることはできますが、多くの人がなかなか逃れられないと思っている大きな呪縛があります。それが何かというと、「お金」です。一般的に老後の三大不安といわれているのが「健康」、「お金」、「孤独」ですが、だれにとっても等しく重要なのが健康であることはいうまでもありません。ところが多くの人は真っ先に「お金」の心配をします。昨年、「2000万円問題」が話題になったことからもわかるように、多くの人が老後のお金ということについて大きな不安を持っています。しかしながら、だれもが不安に思うほどお金は深刻な問題というわけではありません。まず図表1をご覧ください。これは総務省が5年に一度実施している「全国消費実態調査」の2014年版のデータから作成しました。このなかで世帯区分別の貯蓄額が出ています。注目すべきなのは「高齢者夫婦世帯」でこの層が持っている貯蓄額は平均2158万円で、ほかの層に比べて際立って多いのです。したがって「2000万円問題」は、“老後に2000万円足りない”などという話ではまったくありません。むしろ逆です。毎月5万5000円の赤字だから累計で2000万円足りないということではなく、2000万円以上も貯蓄を持っているから、そういう支出で生活をしているということに過ぎないのです。したがって、冷静に考えて、ここからの自分の将来の収支を見つめ直せば、それほど深刻ではないことがわかると思います。ではなく、「減蓄」だと思っています。減蓄というのは、「蓄えを減らす」と書きますから、どんどんお金を使って貯蓄を減らしましょうという意味にとらえがちですが、決してそういうことではありません。もちろんそういう意味も私は60歳からの生き方で大切なことは「貯蓄」「貯蓄」よりも「減蓄」図表1 世帯区分別の貯蓄額(2014年)24※ 総務省「労働力調査(基本集計) 2019(令和元)年平均(速報)」https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index1.pdf出典: 総務省「平成26年全国消費実態調査」より株式会社オフィス・リベルタスが作成。なお、同調査は5年ごとに実施夫婦共働き世帯高齢者夫婦世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの世帯)単身者世帯母子世帯1,088万円837万円2,158万円310万円世帯区分貯蓄額

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