エルダー2020年9月号
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サトイモに含まれる成分を「ムチン」と表記しておりましたが、誤りであることが判明しましたので、お詫びいたします。なお、当該表記につきましては、当時の執筆者の見解であることをお断りいたします。食文化史研究家● 永山久夫エルダー27FOOD323「ウモ」から「イモ」へサトイモは長寿効果高しサトイモは、野山に自生する「山のイモ」に対して、人家の近くで栽培される「里のイモ」という意味があります。サトイモはサトイモ科の植物で、東南アジアが原産地。原産地では、サトイモを「ウビ」と呼びますが、日本に渡来して「ウモ」となり、「イモ」になったようです。日本には、稲よりも早く、ざっと5千年ほど前、縄文時代の中期に渡来したとみられています。稲と違って、水分の多いイモ類は、土中で分解されてしまうために、遺跡からの発見は困難だそうです。稲作が渡来して、米飯が普及する前は、サトイモはカロリー源として主食に近い重要な存在でした。また、サトイモは歴史が古いこともあり、日本人の生活の節目節目に登場します。旧暦の8月15日の中秋の名月は、「いも名月」と呼ばれ、三■■方■■にゆでたサトイモを山盛りにして、お供えするのがならわし。家族みんなで満月を見上げながら、サトイモを食べて、子孫繁栄をお祈りします。「イモの煮ころがし」といったら、おふくろの味として、現在でも居酒屋などでは不動の人気。皮をむいたサトイモをだし汁、醤油、砂糖でコトコト弱火で煮含めるのがコツ。「笑顔を絶やさずに、感謝の心持ちで煮なさい」と母親が子どもに伝えてきた家庭の味です。古くからの料理にイモ田楽があります。ゆでたサトイモを串に刺し、ユズ味噌、サンショウ味噌、ショウガ味噌などを塗って、香ばしく焼いたもの。朝夕、涼風が吹くころになると、無性に口にしたくなります。サトイモ独特のぬめりの成分はムチンやガラクタンなどで、糖質とタンパク質が結合したものが中心となった成分。ムチンが主として腸内の善玉菌を増やし、ガラクタンは腸内環境をよくする働きをし、結果として、ウイルスや病気などに対する免疫力を高めてくれます。食物繊維も豊富ですから、便通の改善にもつながります。若返り効果があるというビタミンEが含まれているのも、うれしいですね。縄文人も食べていたサトイモ日本史にみる長寿食

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