エルダー2020年9月号
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賃金決定の第一の原則〜「同じ価値には同じ賃金」の内部公平性原則〜価値と貢献度と賃金決定方法の多様性るパートタイム・有期雇用労働法が施行され、企業はこれまで以上に「なぜ、その賃金なのか」を社員に説明することが求められます。その理論武装のためにも、基礎理論を理解しておくことは大切です。2まず会社は賃金をどう決めているかを、改めて考えてみます。社員は賃金を生計費にみあって決めてほしいと思うかもしれませんが、会社はそうはいきません。社長になったつもりで、ある社員に多くの賃金を、ほかの社員に少ない賃金を払うのはなぜかを考えてみてください。会社の経営を考えると、経営にとって価値の大きい社員には多くの賃金を、価値の小さい社員には少ない賃金を払うことが合理的な賃金の決め方になるはずです。つまり、賃金は、社員の会社にとっての価値の金銭的表現なのです。そのため同じ価値の社員には同じ賃金を払うという「同一︵価値︶労働同一賃金」が原則になり、それは人事管理では「内部公平性原則」と呼ばれます。いま「同一(価値)労働同一賃金」が問題になっていますが、人事管理からすると「何をいまさら」という感じがします。の会社に対する貢献の大きさ︵貢献度︶で決まそうなると次に、社員の会社にとっての価値はどう決まるかが問題になります。それは社員ります。問題はそこから先で、貢献度をどう測るかです。次の2人の営業スタッフについて考えてみてください。Aさんは顧客との長期的な信頼関係を築くことはできていませんが、今期は大きな売上げをあげています。それに対してBさんは、今期の売上げはたいしたことありませんが、長期的な視点に立って顧客との信頼関係を築くことには成果をあげています。あなたが社長であれば、どちらの社員を会社にとって価値の大きい社員としますか。短期の貢献度からみるとAさんが、長期の貢献度からみるとBさんが価値の大きい社員ということになります。つまり貢献度には短期の貢献度と長期の貢献度があり、どちらの貢献度をとるかによって社員の価値つまり賃金の決め方が異なることになります。しかも、どちらが正解ということはなく、どちらを選択するかは経営の考え方に依存します。例えば、社長であるあなたが、社員にいまの成果をあげることを期待するのであれば短期の貢献度によって、長期的な成果を期待するのであれば長期の貢献度によって社員の価値を決めることになります。法の多様性の視点」と呼ぶことにします。このことは「内部公平性原則」(つまり「同一(価値)労働同一賃金」)という原則は一つでも、貢献度を測る方法が多様であるため、この原則に沿って決まる賃金には唯一最善はなく、賃金の合理的な決め方には多様な方法があることを示しています。賃金に対するこうした見方はたいへん重要です。これを「賃金決定方3貢が、多様であるというだけでは賃金を設計できません。先に説明した短期の貢献か長期の貢献かはあくまでも例示なので、なぜ方法が多様になり、多様な方法にはどんな方法があるのかを体系的に理解する必要があります。そのために用意したのが次頁の図表です。これは仕事のプロセスと貢献度(つまり社員の価値)との関係を整理したものです。社員が能力を持ち、会社の指示に従ってその能力を仕事に投入し、仕事を遂行し、成果をあげる。これが図表に示した仕事のプロセスです。このなかの「成果」は会社に対する貢献そのものなので、「成果の大きさ」が社員の価値を決献度を測る方法は多様であるといいましたエルダー41高齢社員の

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