エルダー2020年9月号
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賃金決定の第二の原則〜人材確保に関わる外部競争性原則〜プに該当します。最後の「労働給付能力レベル」に対応する賃金は、業務ニーズに合わせて機動的に働くことができる社員に多く払うという趣旨の賃金なので、会社の指示に従って転勤する社員に払う全国社員手当などがこれにあたります。4このようにして賃金の決め方が決まっても、実は賃金は決まりません。例えば「仕事の重要度」を基準とする職務給を採ったとすると、まず「仕事の重要度」を測るために職務評価を行います。その結果、仕事Aの重要度が10点、仕事Bが5点であるとすると、仕事Aに就く社員の賃金は仕事Bに就く社員より高くします。これが職務給の決め方です。しかし、これでは賃金額からみた社員の序列は決まりますが、各仕事、社員にいくらの賃金額を払うかが決まりません。つまり内部公平性原則は賃金からみた社員序列を決める原則であり、その序列にいくらの金額をつけるかには別の原則が必要になります。それが、賃金額は人材を確保できる水準とするという「外部競争性原則」です。先の例でいえば、仕事Aを10円、仕事Bを7円にすると市場相場に比べて低すぎて人材が採れないので、市場相場をみて仕事Aを20円、仕事Bを15円にするということになります。このようにみてくると内部公平性原則は、同じ価値の社員の賃金は同じにすることによって社内における社員間のバランス(つまり内部均衡)をとる原則、外部競争性原則は市場相場とのバランス(外部均衡)をとる原則ということになりますが、それぞれの原則からみた賃金額が同じにならないということが普通に起こります。全国展開する、職務給をとる会社を考えてみてください。職務給なので、同じ仕事に就く社員は、社内では同じ価値の社員になるので同じ賃金になるはずです。まさに「同一労働同一賃金」です。ここで、その仕事に就く地方事業所の社員Aと東京事業所の社員Bを想定してください。社員Aはその地方で、社員Bは東京で採用されます。このときには、たとえ仕事が同じであっても、同じ賃金というわけにはいきません。それは地方の労働市場と東京の労働市場では相場が異なるので、人材を確保するには異なる賃金額にせざるを得ないからです。つまり、賃金額を決めるにあたっては、どの労働市場から人材を確保するかが重要になるので、内部均衡とともに市場との外部均衡もみて総合的に考えることが必要になります。これを「市場均衡の視点」と呼ぶことにします。これまで内部公平性原則に関わる「賃金決定方法の多様性の視点」と、外部競争性原則に関わる「市場均衡の視点」を持つことが必要であると説明してきました。それらは合理的な賃金決定方法を設計する際に注意すべきあたり前のことなのですが、往々にして忘れられがちです。例えば「同一労働同一賃金」の議論を聞いて、同じ仕事は同じ賃金とすべきであり、それが唯一最善の決め方であると考えていませんか。もし、そのように考えているとすれば、もう一度、「賃金決定方法の多様性の視点」と「市場均衡の視点」の意味を考えてください。今回は賃金を合理的に設計する際の原則と視点、さらには賃金決定方法の多様性について説明しました。会社にとって高齢社員はどのように活用する社員であるのか、つまり活用の面からみるとどのようなタイプの社員であるのかを明確にしたうえで、それに合う賃金決定方法を原則と視点をふまえて多様な賃金決定方法のなかから選択する。これが「あるべき賃金」を決める手順になるので、高齢社員の場合にも、社員タイプ特性と賃金決定方法の関係を考えることが必要になります。エルダー43高齢社員の

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