エルダー2020年9月号
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連続欠勤とはならず、断続的な出勤不良(欠勤のみではなく、遅刻、早退が増加する)が継続することが多いと思われます。そのため、就業規則などには、連続欠勤だけを休職事由とするのではなく、断続的な欠勤も休職事由としておくことが重要です。断続的な欠勤を休職事由に定めていない場合には、「通常の業務に堪■えないとき」などの抽象的な要件に該当するか否かを判断する必要が生じることが多いのですが、この場合には、専門家である医師の診断書の提出を求めて、当該診断書に記載された療養期間などをふまえて、休職期間を設定することが必要となります。職時の判断については、就業規則などに3復は、傷病が「治癒」されたときや、「従前の業務を通常に行える程度に回復すること」が求められていることが一般的です。復職の判断にあたっては、これらの言葉をいかに解釈するかが、裁判例では争点となっていますが、この際に使用者にどの程度の配慮が求められているのでしょうか。メンタルヘルス不調とは異なる事例ですが、慢性腎不全を原因とする休職からの復帰が問題となった事案において、運転手に職種を特定されて採用されていたものの、ほかに現実に配置可能な部署ないし担当できる業務が存在し、会社の経営上もその業務を担当させることにそれほど問題がないときは、通常程度に業務ができないとはいえないものと判断しており、従前の職務と同じ業務ができない場合には、配置転換や軽易業務への従事などの配慮が求められています(大阪高裁平成一方、職種などの限定がない労働者の復職判断にあたって、妄想性障害という傷病の特性を考慮したうえで、配置転換、在宅勤務などによっても就労させることが困難であったことをふまえて、配置転換などの実施がなかった場合においても、休職期間満了に基づく退職を有効と判断しています(東京高裁平成28年2月25日判決)。したがって、復職時の判断にあたっては、原則として、元の職務のみではなく、配置転換、軽易作業への転換などを検討したうえで、復職の可否を判断する必要があり、例外的に、傷病の程度などから、配置転換などの実施に支障があり実施が困難である場合には、休職期間満了による退職が有効となると整理することができます。なお、復職にあたっては、労働者の治療や回復に関する情報は、労働者の個人情報でありその支配下にあることから、労働者が復職可能であることを使用者に示す必要があると考えられています(前記東京高裁平成28年2月25日判決)。しかしながら、労働者に対して、休職期間の満了時に退職扱いとなることや必要な診断書の提出をうながすことなどは、労働者との紛争回避の観点からは重要と考えられますので、診断書等の提出がない状態を放置することなく、働きかけは行っておくべきでしょう。4復や具体的な方策については、厚生労働省から、「改訂 の職場復帰支援の手引き」が公表されており、参考になります。度についても触れられており、①模擬出勤(生活リズムを勤務時間と合わせるため、自宅で過ごす)、②通勤訓練(自宅から職場付近まで移動したうえで、一定時間過ごして帰宅する)、③試し出勤(職場に試験的に出勤してみる)の三つに分類しています。③が最も復帰に近づけた状況といえるでしょう。労務提供を受けるものではなく、賃金を発生させるものではありません。とはいえ、労働時間として判断されるか否かは、使用者の指揮命令下にあるか否かによって判断されるため、使用者としては、「試し出勤」の実施中に、職後の職場復帰に関する基本的な考え方心の健康問題により休業した労働者正式な職場復帰前に行う、「試し出勤」制これらの「試し出勤」制度は、原則として、復職時の判断について復職後の配慮についてエルダー4514年6月19日判決)。知っておきたい労働法AA&&Q

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