エルダー2020年9月号
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■■■■■ただし、誤解のないようにしておきたいのは、キャリア形成を本人任せにするという意味ではありません。会社として支援することは引き続き重要です。従来は会社が最適な視点で社員へ職務を付与し、60歳や65歳で雇用関係が終了すれば後は関係ないというスタンスが一般的でしたが、今後は長い就業期間や雇用関係の終了後も見据えて、どのようなスキルや能力を習得して働くことが会社にとっても本人にとってもよいのかを、ともに考えていくようなスタンスに変えていく必要があります。会社が施策を打って習得を支援する場合は「キャリア開発支援」と呼びます。キャリア開発支援にはいくつもの方法があります。一般的な施策として、まずは「ジョブローテーション」があげられます。社員に複数の職務を経験させるものです。これは日本企業の人材活用の特徴として、かなり昔から行われています。近年はいくつもの職務を経験させることは専門的なスキル習得の妨げになるとして否定される向きもありますが、本人の適性を見極め、また仕事や視野の広がりを持たせるためにも重要な施策です。自身が向いていると感じていることと、実際にできることには少なからず乖■離■があります。これは実際に経験してみないとわからないことです。また、長年同一職務しか行っていない場合、どうしても視野が狭くなります。製造系の会社で本社の管理部門の社員を工場に一定期間配属させることがありますが、この目的は現場目線の獲得にあります。ジョブローテーションが〝無駄なもの〟として感じられる場合は、無計画に行っているか、ローテーションの意図を本人に伝えていないことなどが理由として想定されます。次にあげられる施策には「フィードバック」があります。業務に関する取組みや行動について、よかった点や改善点を明らかにして、本人に伝えることです。人事評価の結果について上司が部下に伝えるのが、多くの会社にあるフィードバックの機会です。フィードバックの目的は、本人の行動改善や動機づけをすることで成長をうながすことにあります。しかし、一方的に伝えるだけでは成長につながらない、お説教のようになりかえって逆効果という声もあります。そこで、近年では上司・部下間で本人のキャリアや成長について定期的に話し合う「1■on1」という取組みを行っている会社もあります。どの工場への異動の例をとってみても、異動の意義が本人にしっかり伝わっていれば、工場勤務は視野を広げるために重要な経験になりますし、意図が伝わらず本人の意にも沿っていないキャリア開発において話合いは重要で、先ほ会社としてのキャリア開発支援が重要図表2 ジョブローテーションとキャリアパス5 級4 級3 級2 級1 級<等級>職種総合職/専門職分岐キャリア選択期間(職種内異動が主)  ジョブローテーション期間  (職種間異動を含めさまざまな仕事を経験)営 業2020.950出典:筆者作成■事 務製 造

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