エルダー2020年9月号
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場合は、本人にとっては無駄な期間になってしまいます。会社が考える適性配置やジョブローテーションと、本人の希望がかみ合わないことは多々ありますが、その溝を埋めていくのは対話による意識のすり合わせであるといえます。施策の最後としてあげられるのは「キャリアパス」の設定です。キャリアパスとは社内で社員が目ざすことのできる役職や職務などを明らかにして、そこに向けてどのような経験やスキルが必要か過程を示すものです。わかりやすいのが、人事制度で「マネジメント職(管理職)」と「専門職」の二つを目ざせるとして「複線型のコース制度」を用いている会社です。この場合は管理職になり課長・部長と職位を上げていくほかに、自身の職務の専門性を磨けば、部課長と同等の処遇で働くことができることを示しています。そこに至るまでに「等級」という複数段階のステップがあり、等級ごとにどのような能力を身につけ役割を果たせばよいかなど定義が定められ、それをクリアしないと上のステップに上がれない仕組みになっています(図表2)。特にマネジメント職には適性があり、プレーヤーとしては優秀だが課長として組織運営や部下サポートをやらせたら向いていなかったというのはよくあるケースです。このため、課長に就任させる前に小規模組織の運営やプロジェクトリーダーを経験させて、適性を見極めるという取組みをしている会社もあります。人生100年時代を見据えたキャリアを考えた場合、会社のキャリア支援策をただ受け止めるだけではなく、加えて「セカンドキャリア」を意識して自身の武器となるスキルや能力を高めていくことを、本人が主体的に行うことが必要です。セカンドキャリアとは、〝第二の職業人生〟と説明されることが多いですが、より長い期間で考えると〝生き方をどうするか〟という、より広い視野に立つものになります。かつてはセカンドキャリアといった場合、55歳あたりから考えるものとしてとらえられていましたが、近年では遅くとも40代から意識するものという認識が広まっています。書店でよく見かける〝○歳から考えるキャリア〟といった書籍も、対象年齢が早まってきています。人生が長くなったのに、セカンドキャリアを考えるのが早まっているのは一見矛盾しているようですが、考える内容が大きく異なっています。55歳あたりから考えるセカンドキャリアは、退職までの働き方や退職後の過ごし方、資金計画などがおもな内容でした。一方で近年の内容は、いかに長く活躍するか、充実した人生を生きるかに主眼が置かれています。違う会社で活躍する、起業して働けるかぎり働く、働くだけでなく地域や社会に貢献するなど、さまざまな選択肢が視野に入ります。退職後、喪失感によりやる気をなくす、やることがなくなるなどの声もありますが、あらかじめ自身にとって最適なセカンドキャリアを考え、準備ができていれば、退職いかんにかかわらず充実した人生を送ることができるのではないでしょうか。そのため、「セカンドキャリア研修」を実施して意識づけをしたり、他社での豊富なキャリアを持つ就業意欲のある方を積極的に採用し、活躍の場を提供するなど、会社としての役割も高まっています。次回は、雇用延長とも密接に関連する「賃金カーブ」について取り上げる予定です。先に述べたように、同じ会社で働き続ける、☆  今回は「キャリア」について解説しました。セカンドキャリアを意識するエルダー51☆■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典

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