エルダー2020年9月号
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パワハラ防止ガイドブックダイバーシティ&インクルージョン経営一生勝負橘■■■■大■■樹■、吉■■田■寿■■■、野■原■■蓉■■子■ 著/経団連出版/1400円+税荒■■金■■雅■■子■ 著/日本規格協会/1500円+税■■■判断基準、人事管理、相談対応がわかる職場におけるパワーハラスメントを防止する、いわゆる「パワハラ防止法」(労働施策総合推進法)が、2020(令和2)年6月1日に施行された。法改正にともない、厚生労働省は「パワーハラスメント防止のための指針」も公表し、パワハラ防止措置を講じることを企業に義務づけた(中小企業では2022年4月1日から)。本書は、著者である弁護士、人事コンサルタント、カウンセラーの3者が、パワハラ指針の概要や企業のとるべき対応策、過去の裁判例、人事管理のポイント、相談対応とトラブル防止の具体策などをわかりやすく解説した一冊。例えば第1章では、パワハラ防止法が示したパワハラ3要素の意味と具体例や、パワハラ行為に該当する例・しない例などを説明。第2章では、パワハラを誘発させないマネジメントをテーマに、パワハラ対策に効果的な取組みやリーダーの条件、コーチングなどについて説いている。第3章では、訴えを受けたときの初動対応や、相談者・行為者とされた人へのヒアリングのポイントなどにも触れている。パワハラ防止法への対応を進めている企業の経営者や人事担当者らにとって、必読のガイドブックといえるだろう。これからの経営戦略と働き方本書から引用すると、ダイバーシティ経営とは、「人の多様性を受け入れ、活かすことで、組織の成長や活性化、企業価値の向上を図ること」。インクルージョンは日本語で「包括」、「包含」を意味し、著者は「多様性からイノベーションや新しい価値を生み出すための重要なカギとなるもの」と説いている。ダイバーシティ経営は、女性や外国人、障害者、高齢者など組織のなかのマイノリティに焦点をあて、働きやすさなどを求めてきた印象が強いが、最近はこうした属性だけでなく、ライフスタイルやキャリア志向、働き方などさまざまな多様性への取組みが進んでいるという。また、日本でのダイバーシティ経営は大企業から中小企業へと広がっているが、なかには「効果が見えない」、「かえって対立を生んでいる」といった問題を抱える企業もあるという。本書は、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)経営の基本や推進する意味、ダイバーシティ経営推進企業が抱える問題点と解決の方策、SDGsとD&I経営などを解説。コロナ禍で多様な働き方がより注目されるなか、D&Iを学びたい人や、組織の成長につなげたいと考える人たちにおすすめの書である。マスターズ・オブ・ライフ本書は、「スポーツがあまり好きではない」という著者が、人生の熟練者(マスターズ)である現役アスリートを取材して、それぞれの競技とのかかわりや練習方法、勝負への姿勢、競技生活を続けられている背景などを綴っている。登場するのは、71歳の体操と馬術の選手から棒高跳び選手の鳥■谷■宗■弘■さんは65歳からマスターズ大会に出場し、70代になってから記録を伸ばした。体力に合わせて跳び方を変えているそうだ。インタビュー時は、大腸がんの手術や腰痛を乗り越えて毎朝練習に励んでいると話している。競泳選手の西岡政恵さん(86歳)は、「去年と同じなら記録は伸びているといっていい」と自身の記録を語る。ほかの選手も、「昨日と今日はそんなに変わらない。その変わらなさを継続すればいいんです」、「現役に戻ることで、体力をつけようと思った」など熟練者ならではの挑み方や胸の内を明かしている。それらは気迫に満ちたという感じではなく、いずれも晴れやかで、「俺もやってみようかな、とつられることがしばしばあった」と著者。高齢期の生き方や、職場の年長者の気持ちを想像するうえでも参考になる一冊だ。エルダー57髙橋秀■■実■■ 著/文藝春秋/1500円+税89歳の棒高跳びの選手まで、24競技の24組。改正法の内容から対応のポイント、トラブル解決の具体策までわかりやすく解説多様性を包ほう含がんし、組織の成長に活かすには?人生の熟練者に学ぶ、晴れやかな挑み方

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