エルダー2020年9月号
9/68

中央大学大学院戦略経営研究科教授7 ■博■樹■「高齢社員のワーク・ライフ・バランス」というと、みなさんは、何歳くらいまでを想定されるでしょうか。企業の観点からいうと、現状では65歳まで、今後は70歳までという会社が大半だと思います。しかし、高齢者の人生はその後も続きます。「人生100年時代」におけるワーク・ライフ・バランスには、どのような課題があるのでしょうか。日本の高齢者は就業意欲が高いといわれています。実際、いつまで働きたいかをたずねると、人が「働き続けられるまで働きたい」と話します。もちろん、仕事ができる状況にあれば働きたいと考えるのは悪いことではありません。ただし、気をつけないといけない点が二つあります。一つは、高齢になっても働き続けたいと思っているのは、日本人全般ではなく男性に多いこと。もう一つは、就業だけに限定せず、就業以外の社会活動を含む広義の社会参加という観点で高齢者を見ると、日本も欧米も変わらないということです。欧米では、仕事をリタイアしても、何らかの社会活動に参加している人が多いのですが、日本の高齢男性は、就業率が高い一方で、仕事以外では社会とのつながりがなく、仕事を辞めると社会とのつながりもなくなってしまいます。日本の男性が「働き続けたい」というのは、一つは本当に仕事をしたい人もいますが、働くこと以外に選択肢がないからそういっている人が多い現実もあります。日本でも女性の場合には、家庭や地域でさまざまな役割をになっていたり、一緒に旅行に行く友人がいたりしますが、男性にはそれがないのです(図表)。で、仕事をするのもよいし、仕事以外の社会活動をするのもよい、という形にしていくことが求められます。なぜかというと、私たちの研究では、仕事をしている人よりも、仕事以外の社会活動をしている人のほうが、生活の満足度が高いのです。高齢者の生活満足度を高めるためには、働ける機会を増やすことも大事ですが、それしか選ぶ道がないというのではなく、仕事以外にも社会とのつながりを持てる機会をつくるべきです。これからは、仕事以外にも選択肢があるなか日本の高齢者の特徴ワーク・ライフ・バランスの本当の目的とは人生100年時代のワーク・ライフ・バランス―社員の生活改革を含めた本当の働き方改革を 佐藤特集高齢社員のワーク・ライフ・バランスエルダー60歳の人も、65歳の人も、70歳の人も、多くの65歳になってから仕事以外のことをやろうと総  論

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る