エルダー2020年10月号
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特集令和2年度 高年齢者雇用開発コンテストⅠエルダー11えるため、最新設備を積極的に導入し、調理作業の平準化、機械化を進めている。その一つが煮炊き・攪かく拌はん機の導入である。大鍋を並べて煮炊き・攪拌する作業は体力を要したが、設備の導入で大幅に負担が軽減された。また、真空包装設備の導入により、それまで商品一つひとつを包装していた過程が改善され、高齢社員を細かい作業から解放することができた。さらに、冷却装置と蒸気殺菌設備を導入したことで、大量の水や氷を使用する冷却作業の軽減が図られた。調理設備の導入により、高齢社員にとって負荷の大きかった作業が大きく改善され、体力や集中力が衰えても就労が可能になった。高齢社員のなかからは「生涯現役を目ざせる」との声が上がっている。②福利厚生の充実多店舗展開の弊害である社員間の交流不足を補うため、各種イベント、旅行などの行事を実施し、社内のコミュニケーションの活性化に努めている。福利厚生は社員だけでなくパートタイマーやアルバイト社員も対象としている。また、高齢社員は働くうえで年金、介護、税金などの不安が多いことから、いつでも会社に相談できる体制を整えている。こうした取組みの結果、高齢社員が体力や集中力が衰えても長く働ける環境が整備されるとともに、福利厚生の充実により世代を超えた交流が促進され、仕事への活力につながっている。(4)そのほかの取組み大手のコンビニエンスストアとの差別化を図るために、地元で生産された野菜を使い、故郷の味、おふくろの味を再現させた商品開発に力を入れている。この故郷の味、おふくろの味の再現に大きな役割を果たしているのが高齢社員からの助言だ。高齢社員が長年親しんできた福井の懐かしい味を再現し、「地産地消」を目ざしてきた。この姿勢が県民に受け入れられ、現在の多店舗展開に結びついている。(5)高齢社員の声最高年齢者のAさん(76歳・女性)は、パートタイマーとして調理加工部門に長年在籍し、重要な役割をになっている。味つけなどを伝承する役割をになっており、指導を受けた若手社員が伝統の味を受け継いでいる。Bさん(73歳・男性)はレジや品出しなどの店舗の運営業務を担当している。「最新機器導入による作業の標準化と時間をかけたトレーニングによって、機器の操作に対する不安がなくなりました」と話す。(6)今後の課題高齢者の活用について「一層積極的に行いたい」という考えから、将来は定年制度の廃止を目ざしている。また今後は、高齢化社会に対応するため、食材やお弁当の宅配事業の展開も視野に入れている。単なる宅配ではなく、高齢者の持病に適した食材の提供を考えており、その実現には高齢社員の協力が必須である。さらには、お客さまにもっと喜んでもらえるよう、福井のおいしいものを発掘し提供し続けることで食文化の発展に力を注いでいきたいという。全社をあげての新たな挑戦が続く。レジや品出しを担当している高齢社員

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