エルダー2020年10月号
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特集令和2年度 高年齢者雇用開発コンテストⅠエルダー13(4)社員の健康管理に注力しており、産業医の訪問時に、全社員が年2〜3回、15分程度の問診を受けられるなど、健康管理体制を整備した。企業の沿革・事業内容Ⅱ1960年に森もり利としシャツ工業株式会社として南房総市で産声を上げ、ユニフォームの製造・販売を開始した。1999年には現在の社名に名称変更。主な事業内容は、諸官公庁および民間特注のシャツ・ユニフォームの製造・販売である。創業当初は一般アパレルをターゲットとしていたが、商品の移り変わりが激しいことから、経営戦略として、1960年代後半に諸官公庁のユニフォーム製造に特化、国内有数のシェアを誇る。大量生産できない製品の製造のために2016年に子会社ジィ・エル・エフを設立、現在は簡易な防護服なども製造している。官公庁のユニフォーム製造はデザインの大幅な変更がないため、作業内容に大きな変化はなく、作業に習熟した高齢社員が腕を発揮できる。高齢社員が主力となっていることから、生涯現役を促進するため、2016年に定年制の廃止を就業規則に明記した。高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方Ⅲ97人の社員のうち、60歳以上は28人(男性4人、女性24人)で、全社員の28・9%を占める。70歳以上は7人(男性2人、女性5人)で、高齢社員が会社の主要な戦力となっている。組織は機能別に品質保証、製造、営業、総務の4部で構成。そのなかの製造部は工程別に裁断、縫製、仕上げ受渡しの三つの課に分かれ、さらに四つの班で構成される。78歳の最高年齢社員は工場長を補佐し、班長を取りまとめる重要な役割をになっている。また、高齢社員とともに戦力となっているのが既婚女性であることから、働き方改革を積極的に進めて社員の残業時間を抑えてきた。同時に積極的に社員を採用し、地域の雇用にも貢献している。官公庁系のシャツ・ユニフォーム製造は1回の受注量が多いため、品質の高さはもちろん、生産能力が問われる。設備投資(工場新設、自動縫製ミシンの導入など)や作業改善(作業負荷の軽減を図る器具の開発など)、人材育成(マニュアル化、多能工化)を積極的に進めることで作業効率を高め、厳しい競争を勝ち抜いてきた経緯がある。加えて、製造に必要な金型を多種保有しているため、製造ラインの即時立上げが可能な体制が整っており、豊富なノウハウがあることを強みとして、業容を拡大してきた。改善の内容Ⅳ(1)制度に関する改善◦定年制度の撤廃以前は定年60歳、希望者全員65歳までの継続雇用制度を導入していたが、高齢社員が主戦力となっている現状に鑑み、定年年齢を70歳に引き上げた。さらには、2016年11月に定年制を廃止した。その背景には「本人が健康で、働く気があるかぎり働いてもらう」という人材活用方針があった。以前は、定年年齢が近づくと、いつまで働けるのか不安そうな高齢社員もいたが、定年を廃止することによりこの不安が払拭会社外観

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