エルダー2020年10月号
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2020.1014された。◦賃金制度社員区分には正社員とパート社員があるが、定年廃止を機に実態としての社員区分はなくなり、短時間で働く社員を便宜上パート社員としている。基本給の決定基準は賃金規定上「年齢、経験、技能、職務遂行能力、協調性等」により定めるとしているが、実際には社員間の差はない。賃金水準は離職を防止するために必要な額とし、中途採用者は前職の給与に準じて決められ、営業職のなかには、社長よりも高い給与が支給されている社員もいる。賞与は年2回支給され、退職金制度も整備されている。 (2)高齢社員を戦力化するための工夫◦高齢社員による技術・技能伝承2018年の工場の新設にともない、敷地内に人材育成を目的とする研修センターが設置され、経験の浅い社員に高齢社員が初歩的な技術指導を行う場として活用されている。また、研修センター内には子会社が入っており、中国の合弁会社からの研修生が多く在籍し、高齢社員が彼らの指導も担当している。研修センターは高齢社員の知識と技術を伝承する場として大きな役割を果たすと同時に、社外の人でも自由にミシンを利用できるよう一般に開放しており、地域住民とのコミュニケーションの場となっている。◦技術・技能のマニュアル化 諸官公庁のユニフォーム製作においては、品質管理が非常に重要である。品質のばらつきや見落としがないように、高齢社員が中心となって作業マニュアルを作成した。マニュアルによって作業内容が明文化されたことで、時間のロスがなくなり作業の効率化が図られた。また、常に点検しながら作業が行えるようになったことが品質の安定化につながっている。(3)雇用継続のための作業環境の改善、 健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み①作業環境の改善高齢社員が約3割を占めることを考慮して、体力が必要な作業を機械の導入・作業器具の開発によって代替・軽減するようにしている。作業改善のアイデアは全員で出し合っているが、だれでも自由に自分の意見がいえる雰囲気があるため、現場の要望を収集する会議体はなく、要望がある社員は社長に直接意見を伝える形が定着している。◦作業工程の細分化工場の工程は布の裁断、縫製、検品、包装などの仕上げに分かれているが、縫製作業の品質を安定させるため、作業工程の細分化を進めている。作業の細分化により、当該作業に特化した縫製機械を導入するとともに機械の利便性を高める作業器具の開発を進めてきたことで、作業の効率化、高い品質の維持、身体的負担の軽減、人材育成の効率化が実現した。◦作業用機械・器具の開発社内に保全係を置き、細分化した工程ごとに特化した器具を開発する役割をになってもらっている。身体的負担を軽減し、作業効率を高める工夫は以下の通りである。(a)縫製の初期段階で大きい布を取り扱う際、布を動かしながら縫製する作業は身体的な負担をともなうことから、ミシンの動きに連動して布を自動で動かす機械を製作した。(b)シャツに名札を縫いつける際、通常の工業ミシンであれば名札の4辺を縫うために、1辺ごとにシャツを回転させなければならない。手元の細かい作業が多く、高齢社員にとって負担であったため、布の適正な場所に名札を配置し、ボタンを押すだけで4辺を縫うことができる器具を開発した。(c)袋状の製品を裏返す作業が、高齢社員にとって手間がかかり負担であったため、簡単に裏返せる金属棒を製作し、作業台に設置した。(d)ポケットなど縫い目を裏返す製品は折り目がきれいにつかない場合があるため、きれいに折り目がつく金属棒を製作した。(e)足でスイッチを踏むだけで、自動で縫製作業が進むミシンを開発。これにより手元で別の作業をしながら、ミシンを稼働できるようにした。

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