エルダー2020年10月号
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特集令和2年度 高年齢者雇用開発コンテストⅠエルダー15(f)ミシンに布を設置し、(e)のスイッチを踏むことで縫製が自動的に行われるが、この作業が終わった段階でミシンから布を取り外す器具を製作した。この器具はミシンに取りつけられており、(e)と組み合わせて稼働させる。◦LED照明の導入高齢社員の視力低下をカバーするため、LED照明を導入し縫製工場全体の照度を上げた。また、ミシンに照明を設置し手元の照度を上げることで目の疲労を和らげている。◦選べる椅子と製品移動の台車の設置工場内では、長時間座り作業の高齢社員が多く、健康状態にも差があるため、作業用の椅子を体調に合わせて複数の種類から選べるようにしている。また、品質チェックを終えた製品を手作業で移動させることは重労働であることから、製品を移動させる台車の開発を専門業者に依頼、工場内に設置した。◦動線の短縮工場では工程ごとに細かく作業が分けられているため、作業中に製品の運搬を行う場合もある。縫製工場での作業スペースは直線的な配置が一般的であるが、あえて直線的に配置せず、運搬時の移動距離が短くなる工夫をしている。②安全衛生と健康管理社員の通用口から工場をつなぐ渡り廊下部分にスロープを設置し、段差をなくすことで転倒防止を図っている。健康管理としては産業医が全社員の健康状態を確認し、アドバイスを行っている。また、1人あたり年間2~3回・各15分間程度の面談機会が持てるように設定しており、必要に応じて相談ができる体制を整えている。③福利厚生有給休暇取得率はほぼ100%である。工場はシフト制のため、事前に有給休暇の申請を受け勤務体制の調整を行うが、社員の事情を考慮し当日の申請であっても柔軟に対応している。花見やクリスマスなどのイベント行事には全社員が参加、社員間のコミュニケーションを深める格好の場となっている。(4)高齢社員の声最高年齢者のAさん(78歳・女性)は、いまもフルタイム勤務をこなし工場長を補佐している。製造におけるすべての技術に習熟しており仲間からの信頼も厚い。かつて注文服の仕立屋だったBさん(72歳・男性)は、その技術を活かし、製品の仕上げプレスを担当する。片道1時間20分かけての通勤をものともせず、15年の勤続を誇る。(5)今後の課題有能な高齢社員が長く働き続けられる職場環境の整備を経営課題に掲げ、チームワークで一つずつ課題を達成してきた。作業環境の改善については、ほぼやり尽くしたととらえているが、今後新たな高性能の機械が市場に出てくることも予測され、積極的な導入を視野に入れている。高齢社員が活き活き働ける職場として地域の評価も高まり、人材も集まりつつあるなか、地元からの雇用を通じてさらなる地域貢献を目ざす姿勢に熱い注目が集まる。(c)業務効率改善のために開発した、袋状の製品を裏返す金属棒を設置した作業台(e)業務効率改善のため開発した、自動縫製ミシン

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