エルダー2020年10月号
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2020.1018いる。賃金制度などの見直しにより、等級の格付けが職種ごとに何パターンかあったところを、すべて、職種ごとに7等級に統一した。人事評価によっていずれかの等級に格付けされ、それぞれの職種の賃金テーブルによって賃金額が決められている。一方、これまで年功的であった賃金制度については年功的な部分も残しつつ、能力と役割に応じたハイブリッド等級制度を導入することにした。賃金の構成要素は「基本給+能力給」から「基本給」に一本化したことで賃金の額と人事評価の関係がわかりやすくなった。どのレベルに到達すれば昇格できるのかが明確になり、職員のモチベーション向上につながった。◦人事評価制度の見直し従来、勤続年数と人事考課の結果により職種ごとに昇格を決めていたが、育成に主眼を置くため評価制度の見直しを図った。複数の評価シートにより自己評価と上司評価を行い、本人と上司の間でフィードバック面接をすることで次のステップへのぼる足がかりとする人事評価制度に改定した。人事評価は年2回実施し、夏季と冬季の賞与に反映される。すべての職員が、評価や処遇に納得できる透明性の高い人事評価制度となっており、モチベーションを高く持って働ける職場環境が構築されている。(2)意欲・能力の維持・向上のための取組み◦高齢職員の技術・技能継承高齢職員がつちかった知識や経験を若手に引き継ぐため、テキストやプリント資料を作成して研修を実施している。また、医療・介護サービス業においては、接遇やマナーは重要なスキルであるため、OJTを通じて重点的に教育を実施している。◦アンケートの活用職場の諸課題を把握するための「職場生活等に関するアンケート」や、退職者に対する「退職事由アンケート」、職場内のコミュニケーション向上のための「福利厚生/懇親会の実施内容アンケート」などを実施し、その結果を活かした改善に取り組んでいる。例えば、「退職事由アンケート」の結果などを参考に介護離職を減らすため、あるいは趣味の時間確保や体力の回復などの観点から「ハーフタイム勤務制度」を導入している。また、「福利厚生/懇親会の実施内容アンケート」の結果を参考に、職場懇談会(レクリエーション)の費用を支給することとした。◦新職場の創設・職務の開発 2019年度より外国人技能実習生を採用し、ベテランの高齢職員が指導を担当している。また、繁忙などの理由によっては病院で勤務している高齢職員を介護施設の勤務に異動させることもあり、これまでに約20人程度が異動になった実績がある(うち高齢職員は10人程度)。なお、この異動により賃金が下がることはない。◦教育訓練、キャリア形成支援 自己啓発研修や業務にかかわる研修、あるいはグループ研修など職員が自主的に研修などの受講を希望する場合、受講料や授業料などの支援を行っている。例えばグループで研修を実施する場合、講師の謝金や会場費、資料代など10万円を上限に補助している。また、先進事例の視察や必要と認める移動にかかる交通費は5万円を上限に支援している。自己申告すればすべての職員が制度を利用できることから、この制度を活用して准看護師から正看護師を目ざす職員や、リハビリ関係の資格取得を目ざす職員もおり、自己研鑽のために切せっ磋さ琢たく磨まし合う雰囲気が生まれている。(3)雇用継続のための作業環境の改善、 健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み職員の高齢化にともなったきめ細やかな安全衛生対策の必要性に鑑み、以下のような取組みを推進している。◦介護ロボットの導入施設利用者や患者の移乗作業は、介護職員1〜2名で行っているが負担の大きい作業であることから、2016年に介護支援用ロボット「HAL」を2台導入した。これにより移乗作業の負荷が減り、職員の腰痛予防の対策にもなった。この導入により職員にゆとりが生まれ、ケアの質も向上し、利用者や家族の満足度向上にもつながっている。

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