エルダー2020年10月号
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2020.1022治具の開発や作業工程の工夫により対応可能と考え70歳定年制移行にふみ切った。◦賃金制度の見直し社員の多くは女性で、部長、工場長、チーフリーダーといった職場の要に多く登用されている。定年延長にともなう制度改正では、女性社員の納得性を高める取組みが賃金制度に反映された。日給月給制の同社の賃金水準は最低賃金と地場の水準を考慮して決定している。また、各人の作業スキルを「見える化」して処遇に反映させており、教育訓練にも活かしている。各作業のスキルアップレベルは、①経験があるが1人ではできない、②通常の作業ができる、③高難度の作業ができる、④③に加えてほかの社員に教えることができる、という4段階で評価しており、各人が各作業についてレベル判定され、最高レベルに到達すれば指導者となる。この判定は定年時まで継続し、少額ではあるが賃金にも反映される。社員の作業スキルは一覧表として掲示され、だれがどのレベルにあるか一目瞭然であるとともに、自分が目ざすべきレベルも明らかとなる。この作業スキル認定はだれもが納得できるものであり不公平感が生じないため、結果として処遇の差も公平感が保たれるとして、社員からは前向きに受け入れられている。◦多様な就労形態の構築70歳定年移行時に、高齢社員の勤務時間制度の弾力化を図る旨を就業規則に規定、各人の生活形態や体力の低下などに合わせて柔軟な勤務時間が取れるようになった。短時間勤務者は1日7時間以内で柔軟に対応、短日数勤務者についても常勤者の日数の4分の3以内で対応する。このようにして、高齢社員が長く働き続けようとする意識を喚起した。(2)高齢社員を戦力化するための工夫体力などの問題により「いまの仕事が続けられない」と申し出る社員がいれば、本人と相談してほかに適している仕事を検討している。職場環境や勤務状況について、意見や希望を自由にいえる環境を創出するために毎日のミーティングを実施しており、各部署から仕事についての要望が出たときは、意見をていねいに擦り合わせて解決方法を模索している。例えば、「検品業務に就いているが、視力の低下により作業遂行がむずかしくなった」と高齢社員が訴えてきた際には、人手不足で業務に支障が出ていた搬入作業に、当該高齢社員の了解を得たうえで配置転換を行った。その高齢社員は新しい職場で活き活きと働いている。また、前職で経理を担当していたことのある高齢社員の場合は、その経験を活かし午前中は伝票処理などの業務を受け持ち、その後、工場での検査や梱包作業に従事するなど、負担過多にならないための配置を行っている。そのほか、同社のユニークな取組みとして、社員と管理職が一緒に業務運営を考える委員会を構成していることがあげられる。社員代表は全社員のなかから2カ月交代で3名選出され、メンバーは年齢層も考慮し、若手と高齢者も同じテーブルで話し合う。年齢に関係なく忌き憚たんのないさまざまな意見が出されることから、経営者が気づかないアイデアや建設的な提案も増え、会社への貢献意識の向上といった成果もみられる。検品作業をする高齢社員

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