エルダー2020年10月号
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特集令和2年度 高年齢者雇用開発コンテストⅠエルダー23(3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み①作業環境の改善多くの業務が小さな、または極小部品を扱う仕事であり、視力低下は大きな影響が生じる。また、細かな部品を手際よく作業台に載せて加工や検査をするには、治具の工夫や改善が必要となる。作業者からの要望があれば、経営者が自ら体験しながら改善策を考えることもあるという。その結果、細かい部品をセットしての検査業務の見直しをはじめ、さまざまな業務改善が図られている。例えば、以前は顕微鏡を使って品質検査をしていたが、拡大画像を用いて品質が判断可能な装置を導入するなど、高齢社員の負担軽減のための機械化・自動化を進めている。日々の小さな工夫の積み重ねが高齢社員の負荷を減らすと考えている。なお、新型コロナウイルス感染予防対策として、それぞれの作業台に囲いをつけ、安心して作業できるようにしている。 ②健康管理など健康に対する意識を高めようと、健康診断による診断結果に対するヒアリングを実施している。また、安全衛生の取組みとして冬場の工場内の温度や湿度の管理、マスクの着用、消毒などを徹底している。③福利厚生の充実同社を構成する社員の年齢層が広いこともあり、コミュニケーションを図るため年に数回、懇談会や食事会を開催している。社員の大半を占める女性社員が企画しており、工夫を凝らした企画は好評である。レストランでの開催もあれば、ケータリングを利用して社内で実施するなど自由な発想で行っている。リラックスした雰囲気のなか、さまざまな要望が出されるので改善のための貴重な情報を得ようと必ずトップも出席している。毎朝のミーティングをはじめ常日ごろから社内で社員が要望を伝えやすい環境が整っており、しかもトップと直接話す機会も容易に得られること、そして実際にトップが自身で体験したうえで結論を出すという流れができていることが、さまざまな福利厚生の充実につながっている。(4)高齢社員の声Aさん(66歳・女性)は、正規社員としてフルタイムで検査・梱包・加工を担当しているが、身体がよく動き機転も利く。仕事の内容を厭いとわず、与えられた仕事は何でもこなす働きぶりは若手社員のよき手本となっている。Bさん(70歳・女性)は、パート社員で1日5時間30分勤務。朝は伝票処理などの事務作業に従事し、その後は現場の作業に入る。パワフルな行動力が、ほかの社員の刺激になっている。(5)今後の課題同社は「高齢社員が能力を活かして働ける職場の実現」を合言葉に邁まい進しんしてきた。70歳定年や多様な勤務時間制度の導入に加え、業務遂行に必要な検査治具の開発や雇用継続のための新規業務の開拓を実施している。今後も社員全員でコミュニケーションを図り、自由に意見をいえる社内環境を維持していくとともに、高齢者・障害者が分け隔てなく働ける職場の実現に向け、社員一丸となっての取組みが続く。製品運搬作業をする高齢社員

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