エルダー2020年10月号
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2020.1026日々のやり取りのなかで、総務担当者が本人の希望を聞き、正社員を希望すれば変更も可能とするなど、柔軟に対応している。役職が少ないこともあるが、役職定年はない。給与は、総務担当者の査定により決定されているが、職務内容に基づくとともに、年齢に関係なく、全社員を対象にベースアップを毎年実施している。また、個人の成果については、年2回の賞与に反映している。なお、技能・技術的に優れる高齢社員が賃金面では若手より高額になるが、若手社員には今後の成長への期待を込め、現場管理職のヒアリングをもとに算定している。退職金については、中退共(中小企業退職金共済事業本部)に加入しているが、退職時には中退共からの退職金に加え、会社からも一定額を支払っている。◦多様な勤務体系工場はコスト面の関係から24時間操業しているが、夜勤は若手社員がローテーションを組んで担当しており、高齢社員は体力面などの理由で日勤のみである。体調不良や持病のある高齢社員には特に小まめに気を配り、業務に無理が生じていないかを常に確認している。また、社員から勤務日や勤務時間について相談があれば個別に対応している。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み異型押出成形という技術を持つ会社はきわめて少なく、経験者が入社することは稀まれである。そのため技術の継承に力を注いでいる。工場に設置された21台の機械はそれぞれ用途や仕様が異なるため、入社すると各機械の操作・工程を一通り経験することが必須となる。製造の工程としては、原料に染料で色をつけ、機械のホッパーにセットすると後は機械が成形・加工を行うが、人の手が必要なのは原料のセットと機械への数値の入力である。数値の入力はその日の気温、湿度、時間帯などによっても左右されるため、作業の基本となる手順書はあるものの、細かい調整は高齢社員の経験と勘に頼っており、ノウハウは主にOJTで伝承される。新人が入社すると、高齢社員などのベテラン社員が指導役となり、約1カ月間、マンツーマン方式で基本的な製造技術のノウハウを伝授する。その後、新人には高齢社員がつきっきりで21台の機械それぞれについて数値の入力のコツなどを教える。機械の種類や難易度はさまざまであり、また製品によっては追加の加工が必要なものもあるため、覚えることは多い。高齢社員と若手社員では価値観や考え方に違いがあることから、当初はうまくコミュニケーションがとれなかったが、粘り強く柔軟に指導するなかで人材は着実に育成されている。(3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み①作業環境、安全衛生の改善◦LED照明の導入、転倒防止、重量物対策など高齢化による視力の低下を補うため、工場および事務所の照明をLED照明に切り替え、通路の照明の数を増やすとともに、工場での作業時に手元を照らすLED照明を設置した。作業現場がLED化されたことにより、作業場内の移動の安全性が高まるとともに作業効率も向上した。また、転倒防止については、工場内で取り扱う製品が大きいこともあり、もともと床の段差や凸凹の少ない設計となっていることに加え、防ぼう滑かつ対策として、床を適度な摩擦係数を持つコンクリート仕様にした。さらに、取り扱う製品は数量がまとまると重量物となることから、製品移動時の負担軽減対策として、検査梱包場所への移動時にはすべてカーゴ(車輪つきの荷受け台車)を使用している。カーゴは基本的に男性社員が移動させることになっているが、カーゴのキャスター部分を直径の大きいものに変更し、前後左右の可動により力を要さずに移動できるよう改善した。これにより女性の高齢社員でも移動できるようになっている。そのほか、腰に負担がかからないよう、作業によっては椅子を設置して座った状態で作業できるようにするなど、高齢社員の体力面に配慮しているほか、日常の業務で発生した「ヒヤリ・ハット」については、その都度声かけなどを行

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