エルダー2020年10月号
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特集令和2年度 高年齢者雇用開発コンテストⅠエルダー27い問題を共有したうえで改善を図っている。高齢社員のなかには別の会社を定年退職し、同社に入社した者もいることから、前職の溶接の技能を活かし、積み上げた製品が倒れないよう仕切りを自作するなど、社員一人ひとりが積極的に安全衛生に努めている。②健康管理◦人間ドック、インフルエンザ予防接種の無償化人間ドックは45歳以上の社員、インフルエンザの予防接種は全社員を対象としており、費用の全額を支給している。いずれも受診日や場所などを各々の都合に合わせて受診できるため、社員にたいへん好評である。(4)その他の取組み年次有給休暇については、休日や半日休暇の取得など事前に申請書の提出がなくても、口頭での申請と事後提出でも承認されるよう整備した。高齢社員の場合、居住地域の役員などを引き受けざるを得ないことがあり、急な呼び出しなどもあるため、事前申請提出でなくても休みを承認できるシステムは歓迎されている。 定年制度の廃止以降は、高齢層の応募が急増したため、ハローワークや北杜市を通じて積極的に中途採用を行っている。現在最高年齢の社員も、それまで勤めていた会社を定年退職後に中途入社し、80歳のいまも第一線で活躍している。エクステリア事業部の73歳の高齢社員の場合は、建築会社を定年後に技術者として入社した。特殊な技術である異型押出成形の経験は皆無であったが、それまでの経験をもとにノウハウを学んでもらえるよう、指導・育成を行っている。一方、新卒採用も行っているがなかなか定着しないのが悩みの種となっている。北杜市がUIJターン事業に力を入れており、市の斡旋で30代の男性を採用した。現在、戦力となっており、若い力に大いに期待している。 (5)高齢社員の声Aさん(63歳・男性)は、幅広い知識と行動力と人的ネットワークを駆使し、公的な補助金申請を行いながら新製品の研究開発にたずさわり売上拡大に貢献している。人材育成や業務改善なども担当し、なくてはならない人材となっている。Bさん(76歳・男性)は、入社以来一貫して切断・面取り作業に従事してきた。「慣れている作業でありストレスもなく、作業移動量も少ないので長く働けている」と語る。(6)今後の課題同社では、社員の高齢化が進むなか、主戦力である高齢社員が長く働き続けられる職場環境の整備を進めてきた。今後も高齢社員の労働負荷を軽減するため、本人の申し出があった場合は配置転換するなど柔軟に対応していく。また、いまでこそ該当者はいないが、介護離職者が出ることなどを視野に置いて、介護・育児などに対する規程を設けているため、今後は社員の利用を積極的に呼びかけていく考えだ。マンツーマン方式でつちかったチームワークを力に、技術を継承していくための奮闘が続く。重量物の運搬作業の負担を軽減するためにキャスターを大型化したカーゴ(右)改善前改善後

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