エルダー2020年10月号
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特集令和2年度 高年齢者雇用開発コンテストⅠエルダー29るようになり、現在は石英ガラスおよび工業用ガラス材料の加工・販売、工業用セラミックの加工・販売、酸・アルカリ溶液洗浄槽および付帯設備の製造・販売、各種電気炉の製造・販売を行っている。事業所は、本社・京都営業部のほか、宇う治じ田た原わら工場、主な取引先の所在地である横浜、金沢、名古屋、大阪、福山、久留米に営業所を展開し事業を拡大してきた。営業所の社員は原則的に現地採用となる。石英ガラスの加工をになう企業は、全国的に見ても数が少ないことから、安定的な経営ができていることが強みとなっている。高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方Ⅲ社員94人のうち、60歳以上は16人(すべて男性)で、全社員の17・0%を占める。70歳以上は5人となっている。比較的若年層の採用が容易なこともあり、技能伝承のために余裕を持って人員を採用し、技能の伝承に取り組む時間を確保している。以前は新卒採用を行っていたが、定着率が低いことから、現在は人員体制を維持するために他社でつちかった技術・技能を有する者の中途採用を積極的に行っている。94人の社員のうち90名ほどが中途採用者で、他社で定年を迎えた人も採用するが、必ずしも専門能力や技術を必須としているわけではなく、意欲が見られれば採用し、仕事に慣れていってもらうという方針で進めている。石英ガラスは半導体業界からの需要が大きく、半導体業界の技術進歩のスピードの激しさから、年々求められる製品の作成難度は高くなっている。加工については機械化がむずかしいものがあり、熟練度の高い経験が重視されることから、事業を継続するうえで、高齢社員の蓄積された技術の活用と、後進への技能の伝承が必要であり、高齢社員が長く働き続けることができるよう、職場環境の整備を推進してきた。改善の内容Ⅳ(1)制度に関する改善◦定年制等2018(平成30)年に定年を65歳に引き上げた。さらに70歳まで継続雇用制度を延長している。また、70歳を超えても働き続けてほしいとの思いから、加工の際に重要である目と手の機能が衰えないかぎり、70歳を超えても雇用を継続することとした。本人の希望を尊重し、60歳で一度定年退職し嘱託社員となったものの、その後定年年齢が引き上げられたことから正社員となったケースもある。一方、定年後は嘱託社員として働くことを選択する社員もいる。◦処遇(賃金、退職金など)正社員と嘱託社員の賃金は同じであるが、嘱託社員は1年契約の雇用であり、役職からは外れる。賃金は年功(年齢給)要素のある基本給と職能給を組み合わせて決定する。定年までは昇給があり、定年後は正社員、嘱託社員ともに昇給はないが、働きぶりによる賞与でカバーしている。賞与については経営層が個々の働きぶ会社外観

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