エルダー2020年10月号
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2020.1030りを見て算定しているが、額の大きな差は生じていない。手当では扶養手当が手厚くあり、役職者には役職手当があるが、定年後は役職が外れ役職手当の対象外となる。退職手当については、民間保険会社の企業型確定拠出年金制度を活用しており、定年時に受け取れるようにしている。また、定年後もあらためて積立てを行っており、少額ではあるが雇用終了に合わせて受け取れるようにしている。処遇や勤務形態などについては、個々の社員の状況を見ながら弾力的な対応を行っている。◦評価制度明確で公平な評価制度として、営業部門であれば担当者の売上額、加工技術者であれば製造額などの基準を定めることなども検討したが、景気状況や製品ごとに製造条件などが異なることから、不公平な状況が生まれることが懸念され、基準などを定めることがむずかしいため現在の評価制度に落ち着いた。日ごろの働きぶりなどを社内でヒアリングし、社長決定のもと、賞与に反映する仕組みをとっている。その場合「絶対評価」ではなく、「相対評価」で決定している。(2)高齢社員を戦力化するための工夫高齢社員がつちかってきた技術を後進へ伝承するため、以下の四つの取組みを行っている。◦第一に、加工の手順が熟練の高齢社員ほど自分のやり方に固執して教え方が統一されていなかったため、5年前から手順を標準化・統一化した。一つの製品について、切断、マシニング加工、レーザー加工、旋盤加工などの各種加工、歯車の発注と取りつけ作業など多くの作業、手配、工程があり、それらをどのような順番・タイミングで行うかで要する時間が大きく異なる。熟練の高齢社員がそれぞれ持っていた自分のやり方を精査し、統一化することで、最適な工程を共有することができるようになった。◦第二に、加工作業を映像化し、技能伝承の補助ツールとして活用している。例えば、バーナーの火の色、バーナーをどの位置からどの角度で入れるのかを撮影し、音声をつけた動画を作成している。映像化はさまざまな作業に展開していく予定である。◦第三に、熟練の高齢社員が若手社員とペアを組み、円滑に指導できる体制を整備した。ペアは技術を引き継いでほしい人を選んで組んでもらうが、相性も考慮して定期的に見直しや、ペアの変更をしている。職人というと、「盗んで覚えろ」というイメージが強いが、自分の技術を正しく伝えたいという思いから、ていねいな指導方法が展開されている。◦第四に、熟練の高齢社員には、加工従事者のスキルの習得度を評価させている。例えば、ペアを組む若手社員について、作業工程を細分化し作業ごとの習得確認や評価を行う。この結果は給与などには反映されないが、若手社員の育成が競争意識を生むことで高齢社員の指導意欲が高まり、モチベーションの向上につながっている。若手社員にとっても新しい作業をこなすことで実際の業務の習熟につながるため、大きなやりがいとなり、相乗効果が生まれている。「工程表」と「映像化」により、技術・技能のベースになる部分の共通化を行い、ペアを組ん若手社員とペアを組み技術指導を行う高齢社員

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