エルダー2020年10月号
48/68

2020.1046はじめに〜賃金の決め方を変える二つの力〜1前回は「賃金決定の基礎理論」について説明したので、これからは、その道具をもって「あるべき賃金」を検討します。まずは定年前の正社員の賃金についてです。連載で問題にしている高齢社員の多くが正社員から非正社員に転換するものの、定年をはさんで雇用を継続している社員であるため、定年後の賃金は定年前とどのように関連づけて決定するかが問われるからです。正社員の賃金は徐々にですが確実に変化してきました。そのため正社員の賃金は、現状とともに変化の方向も把握し、高齢社員の「あるべき賃金」はこの現状と変化の方向の両者を念頭にいれて考える必要があります。ではなぜ、賃金は変わりつつあるのか。これまで説明したように社員の仕事の内容や働き方は、会社の「こう働いてほしい」という社員に対するニーズ(つまり労働サービスの需要構造)と、「こう働きたい」という社員のニーズ(労働サービスの供給構造)をふまえて決まります。さらに社員に対する需要構造は会社の経営の考え方や戦略に、供給構造は社員の生活やキャリアに対する考え方に規定されます。例えば、いまある商品やサービスを顧客に間違いなく届けることを重視する経営をとるのであれば、会社は社員には決まった手順に沿って間違いなく働くことを求めることになりますし、仕事と生活の両立を図ることを重視するのであれば、社員は生活の事情に合わせて柔軟に働くことを求め 高齢者雇用を推進するうえで重要な課題となるのが高齢社員の賃金制度です。豊富な知識や経験を持つ高齢社員に戦力として活躍してもらうためには、高齢社員の能力や貢献を適切に評価・処遇し、高いモチベーションを持って働いてもらうことが不可欠となります。本連載では、高齢社員戦力化のための賃金戦略について、今野浩一郎氏が解説します。高齢社員の学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長 今野浩一郎いま  の第4回日本型賃金の現状と行方

元のページ  ../index.html#48

このブックを見る