エルダー2020年10月号
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エルダー47ます。賃金はこうして決まった仕事の内容や働き方に合わせて決定されるので、賃金の決め方は労働サービスの需要構造あるいは供給構造が変わると変化することになります。つまり、この二つが賃金の決め方を変える力なのです。現状の賃金の決め方を確認する2わが国の企業の賃金の決め方は、勤続年数を積むにしたがって賃金が増える年功賃金であるといわれてきましたが、それでは賃金の決め方を正確に表したことになりません。それは、賃金を成果と関係なく勤続年数にリンクして決めたのでは、企業は経営を維持することがむずかしいからです。わが国の企業が長期にわたって年功賃金をとり、そのもとで経営を維持できた背景には次のことがあります。社員は勤続を積むほどに、多くの訓練と仕事を経験し能力を高めるので、より大きな成果をあげることが可能になります。その向上した能力に合わせて賃金を決めるのが年功賃金なので、賃金は成果とリンクして決まることになります。このことがあるので、いま多くの企業は、社員の能力に合わせて賃金を決める、年功賃金の一タイプである職能給をとっているのです。さらに、向上した能力は将来にわたって発揮され成果に結びつく、つまり能力が向上した時点とそれが成果に現れる時点がずれるので、年功賃金のもとでは、時点、時点でみると賃金と成果は一致しないことになります。それをモデル的に示すと図表1になります。そこでは賃金は年齢とともにS字型に上昇する、社員の貢献度(つまり成果)は年齢とともに上昇するが年齢が高くなると停滞する、ということが想定されています。まず若手社員の時代は訓練期にあたるため賃金が成果を上まわります。両者の差にあたる「A」は会社が、教育のために負担する費用にあたります。次の中堅社員になると、訓練期に獲得した能力を発揮して成果は向上しますが、賃金はそれより低い水準に設定されます。そのため成果は「B」の部分だけ賃金を上まわることになります。さらにシニア社員になると、賃金は上り続けますが成果は停滞するので、賃金は成果より「C」だけ多く払われます。ここで重要なことが二つあります。第一は、賃金が成果を上まわる(いわば、社員が会社から借りた)「A」+「C」と、成果が賃金を上まわる(社員が会社に貸した)「B」が等しくなるように賃金が設定されていることです。ですから図表1では、「B=A+C」を会社と社員の間の貸し借りが等しくなる「長期決済条件」と呼んでいます。さらに以上のことは、賃金が入社から定年までの長い期間のなかで成果にリンクして決定されることを示しています。これ(賃金/貢献度)若手社員中堅社員シニア社員入社定年貢献度(成果)長期決済条件 B=A+CABC賃金※筆者作成図表1 年功賃金のモデル図高齢社員の

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