エルダー2020年10月号
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エルダー3ています。しかし、食事・栄養をとり、体を動かし、人と交流するという三大原則は、昔からいわれてきたようなだれもが知っている話です。あらためていわれても〝自分事〞として腹落ちしません。私は「良質な脅し」という言葉を使っていますが、大事なことは最新の科学的知見に基づいたデータによって気づかせることです。例えば、「高齢期に2週間、寝たきりに近い生活を続けると7年分の筋肉をいっぺんに失います」というとみなさん驚かれます。そうすると、運動をしなければいけないと納得してもらえるのです。―フレイル予防の取組みを全国で展開しているそうですね。飯島 高齢市民主体のフレイル予防を軸とした健康長寿街づくりをモデル化しています。食・運動・社会参加について、フレイルにつながる22項目のわかりやすいフレイルチェックを開発し、高齢市民主体で実践しています。各地域の元気なシニアがフレイルサポーター※3の養成研修を受講し、市民同士で自主的にチェックします。さらに養成する役割をになう現役の理学療法士や保健師などの医療専門職をフレイルトレーナーとして組織化しています。すでに全国66の自治体で導入され、今年度中に約20の自治体が新規に導入する予定です。もちろん従来からの介護予防事業もありますが、大きく違うのは医療専門職などによる指導だけではなく、高齢者同士でチェックすることで、〝自分事〞としてとらえる流れをつくるということです。もう一つは一過性のイベントではなく、栄養・運動・社会参加の三位一体を意識させることで継続性を持たせることです。そうすることによって、介護予防に新しい風を吹き込もうというのがフレイル予防です。運動は嫌いでも、カラオケや囲碁、将棋は大好きだという高齢者もいます。例えば、複数の友人と定期的にカラオケ店で思いきり歌い、ファミリーレストランでハンバーグ定食を食べながらワイワイとお度が落ちていきます。第三は可逆性、リバーシビリティです。加齢とともにフレイルになっても、自分次第でまだ回復できる余地があるということです。 IOGが2012年に千葉県柏かしわ市で無作為抽出した高齢者約2千人を対象にした調査では、毎日活き活きと健康的な生活を送るためには「しっかり噛んで、しっかり食べること」、「運動すること」、「社会参加すること」の三つをバランスよく実践することが大切で、これが、フレイル予防につながることがわかっ食・運動・社会参加の三位一体を意識させフレイル予防を継続※3 フレイルサポーター……研修を受けてフレイルチェックなどの地域の健康づくりのにない手として活躍するボランティア

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