エルダー2020年10月号
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テレワークと情報管理について2テレワークは、就業場所の変更をともなう一方で、ルールを定めておかないと制約なく業務ができる体制になってしまうことも意味しており、企業にとっては情報がさまざまな場所で管理され、拡散されるおそれが出てきます。ガイドブックにおいても、情報管理のためのICT環境の構築などが案内されており、企業にとっての情報管理の重要性は意識されています。こちらでは、技術的な側面からのセキュリティに対する助言が記載されています。技術的な側面も重要ですが、人為的な側面として、就業場所の限定をいかなる基準で設定していくかという点も重要です。例えば、自宅以外の場所として、近隣のカフェなどで勤務する場合には、Web会議における内容が周囲に漏えいするおそれがあり、企業の情報管理に関する課題が現れてきます。こういった側面は技術的な情報管理の側面で解決できるものではなく、就業場所をいかに限定するかという点と関連してきます。典型的には、在宅勤務(自宅のみでテレワークを許可する)、サテライトオフィス勤務(企業が用意した施設での勤務を許可する)、モバイルワーク(いかなる場所でもテレワークを許可する)といった3種に分類されています。情報管理の側面からすると、在宅またはサテライトオフィス勤務の方が情報管理は容易といえるでしょう。モバイルワークで行う場合には、外部で利用できるソフトウェアの制限や必要以上の情報に接することができないようにアクセス制限を行うなど、技術的な管理も併用しながらも、漏えいや紛失などを防止するためのルールづくりも重要となってきます。労働時間(労務提供)の管理について3在宅勤務を始めたけれども十分な労務提供を行わないおそれがある(心配である)など、これまでのように会社に集まって仕事をしているときとは異なる懸念があります。労働時間の把握は正確に行う必要がありますので、その方法も準備する必要があります。通常の勤務と比較すると、中抜けが生じやすくなり、業務効率が下がって残業が増える(逆に、効率が上がって残業が減少する場合もあります)など、実際に実施してみるとさまざまな変化も見えてくるかと思います。労働基準法に基づき休憩時間についても一斉付与が原則ですが、集合しているわけではないため一斉休憩は現実的ではなく、労使協定を締結して適用を除外しておく方が適切でしょう。また、テレワーク中の労務提供が十分に行われるか否かという点は、これまでの労働環境からの大きな変化であることから、労使間の信頼関係のみでは解決できない側面もあり、如何なる方法であれば、相互に納得できる制度として構築できるのかという点は重要な観点です。常時監視するためのシステムを導入することがよいのか、業務効率が上がるようなシステムを導入したり、時間以外に業務の成果を見える化することで相互の不満が生じないような就業状況をつくるなど、自社に合った方法を導入することが重要でしょう。労働時間の管理については、過重労働が生じないようにすることが目的であると割り切って、労務提供の成果などについては、日々の業務について日報を提出させて、翌日に行う業務の整理も前日(またはそれよりも前)に行っておくように習慣づけることで、業務の効率化と成果の把握を実現できるようにしていく方法も一案です。長期的にテレワークを実施する場合には、人事考課の際に定性的な評価がむずかしくなるおそれもあるため、そういった評価に必要な情報を集めるためにも、離れているからこそWebでの会議などを通じて、コミュニケーションが欠落しないように配慮するよう意識することも重要でしょう。エルダー53知っておきたい労働法AA&&Q

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