エルダー2020年10月号
56/68

株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者ならおさえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2020.1054第5回目は「賃金カーブ」です。賃金カーブは、日ごろ聞きなれない用語かもしれません。図表を見るとわかりやすいですが、横軸が年齢、縦軸が給与の水準を示したものです。年齢や勤続年数に応じた給与の上昇傾向といえます。賃金カーブの基本は右肩上がり年齢や勤続年数を重ねると、給与は上昇していくものというのが一般的なイメージですが、それが本当かと疑問に思ったことはないでしょうか。あたり前のことのようですが、実はこの問いは、筆者がまだ駆け出しコンサルタントのころに、お客さまから受けたものです。それまで〝給与は年を重ねると上がるもの〞と思い込んでいたため、答えに窮きゅうした覚えがあります。実は年齢や勤続年数によって賃金カーブが上昇するのは、一部の属性といわれています。図表を見ていただくと一目瞭然ですが、男性は50代半ばまで上昇しますが、女性の上昇傾向は明確ではありません。誌面の都合上、いろいろなグラフを載せることはできませんが、例えば、いわゆる正社員は上昇傾向ですが正社員以外は横ばい、金融・保険業は大きく上昇傾向ですが、サービス業関連は緩やかな上昇になっています。関心のある方は「令和元年賃金構造基本統計調査の概況」(厚生労働省)を見ていただくと、複数の切り口で賃金カーブのグラフが掲載されており、傾向が把握できると思います。給与が上昇するというのは男性・正社員・一部の企業にはいえることですが、他の属性では必ずしもそうではないということが分かります。人事の世界では、一般的にイメージされていることと実態が必ずしも一致しないことがありますが、その一例といえます。一方でイメージ「賃金カーブ」第5回50100150200250年齢~1920~2425~2930~3435~3940~4445~4950~5455~5960~(歳)各調査年の男女計「20~24歳」の平均所定内給与額=100男性1976年男性2019年女性2019年女性1976年女性1995年男性1995年出典:労働政策研究・研修機構(資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)   https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0405.html図表 性別、年齢階級による賃金カーブ注1: 1976年、1995年、2019年の各調査年での男女計の「20~24歳」の平均所定内賃金額を100としたときの各年齢階級の平均所定内給与額をあらわしている注2: 19歳以下と60歳以上では調査年により年齢階級区分が異なるため、労働者数ウェイトを用いて区分を統合した値を推計した

元のページ  ../index.html#56

このブックを見る