エルダー2020年10月号
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2020.1056FOOD日本史にみる長寿食食文化史研究家● 永山久夫免疫力を高める「赤まんま」新月と満月には赤まんま小あずき豆は、赤い色に特徴がある豆で、縄文時代の遺跡から出土するほど古くから食用に用いられてきました。『古事記』や『日本書紀』にも、悪霊除けの聖なる豆として登場します。神社の鳥居が朱色にしてあるのも、災いが入り込むのを防ぎ、けがれのない聖域を維持するためといわれています。小豆の赤い色は、日本人にとって、神聖な色であると同時に、流はやりやまい行病などに負けない疫病除けの力のこもった守護色でした。ついこの間まで、日本各地の農村地帯には、毎月一日と十五日には「赤まんま」と呼ぶ小豆ごはんを炊き、神さまにお供えしてから家族そろって食べる習慣がありました。農作業などで働きづくめの疲れた体を元気にし、同時にインフルエンザなどにかからないように免疫力を高めるために大切な行事だったのです。一日と十五日というと、旧暦では新月と満月にあたります。月の満ち欠けを目安に小豆ごはんを食べることによって、体内のメンテナンスをする日本人の知恵といってよいでしょう。現代人に必要な小豆の栄養成分小豆には、疲労回復に役立つビタミンB1がたっぷり。脳のエネルギー源は主として、ごはんなどに多い炭水化物ですが、そのスムーズな代謝に欠かせないのがビタミンB1。情報化時代の勝者になるために欠かせないのが記憶力と発想力。「赤まんま」の時代がきたのです。このビタミンが不足すると、イライラしたり無気力になったりするだけではなく、記憶力の低下につながりかねません。小豆には強い抗酸化作用があり、老化の進行やがんなど病気の原因となる活性酸素を消去する力が強いことで知られています。若返り成分として注目のビタミンE、お肌の若々しさを保つナイアシン、認知症予防が期待される葉酸と、ビタミンB1以外にも、長寿成分がたっぷり。食物繊維も多く、小豆100g中に約18gもあり、腸内の善玉菌を増やして体全体の免疫力を高めるうえでもとても役に立ちます。「赤まんま」は、超高齢化時代の「理想のごはん」と呼んでもよいでしょう。324

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