エルダー2020年10月号
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特集令和2年度 高年齢者雇用開発コンテストⅠエルダー7令和2年度高年齢者雇用開発コンテストの審査が終了しました。審査委員を代表し、応募いただいたすべての企業・団体関係者のみなさまに厚く御礼申し上げます。今回は全国から98編の応募を受け、厳正な審査の結果、厚生労働大臣表彰は最優秀賞1編、優秀賞2編、特別賞3編、高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰は22編が入賞を果たしました。最優秀賞を受賞した株式会社大津屋(福井県)は、「地産地消」の店内調理・イートインなどを活かした地域密着のコンビニ事業を展開。経験豊かな中高年層を積極的に活用し、柔軟な就労形態、AIを活用した最新機器の導入で、高齢社員の体力的な負荷を軽減しているほか、高齢社員の知識や経験が商品開発にも活かされるなど、多彩な取組みが高く評価されました。優秀賞のグロリア株式会社(千葉県)は、シャツ・ユニフォーム分野で国内有数のシェアを誇り、安定した事業で地域の雇用に大きく貢献。高齢社員を主要な戦力ととらえて定年制を廃止し、作業負担軽減のための設備投資や作業器具開発の推進などが評価のポイントとなりました。医療法人成せい雅が会泰たい平へい病院(福岡県)は、職員の定着に注力して制度や環境を整備。経験豊かな高齢職員が能力を発揮できる職場づくりの取組みに着手し、定年年齢や再雇用上限年齢を引き上げました。現役職員と定年後の職員を同じ基準で評価する賃金制度も大きな特徴です。特別賞を受賞した株式会社新潟アパタイト(新潟県)は、各人の作業スキルを「見える化」し、処遇に反映させることで公平性の高い賃金制度を構築しています。また、個々の事情に合わせた柔軟な働き方を実現、長く働き続けたいというすべての社員の意欲の高揚につながっています。株式会社清水製作所(山梨県)は、経験豊かな高齢社員によるマンツーマン指導で、若手社員への技能継承に取り組むほか、短時間・短日勤務など柔軟な働き方を実現し、人材育成をになう高齢社員が安心して長く働ける職場環境の創出に全社一丸で取り組んでいます。英えい興こう株式会社(京都府)は、後進への技能継承のため、熟練高齢社員の作業手順を標準化して工程表を作成したほか、作業の映像化、若手とのペア就労などに取り組んでいます。また、保健師による健康指導や休暇制度の充実など高齢社員が長く働ける制度が整っています。高年齢者雇用安定法が改正され、これからは70歳までの雇用・就業にいかに取り組んでいくかが課題となります。今回の審査では、制度上は70歳までの雇用としながらも、70歳を超えて働ける会社も多く、まさに高齢者が戦力として活躍していることがうかがえる結果となりました。これまで多くの日本企業は、60歳定年、65歳まで継続雇用というように、年齢で働き方を区切ってきたわけですが、これにより、高齢者が持つ技術や経験などが有効活用されず失われてきたという一面もあります。受賞企業の取組みを参考に、年齢でひとくくりにせず、一人ひとりのニーズに合わせた対応で、高齢者の活躍の場が広まっていくことを期待しています。経験豊かな高齢者の積極的活用で働きやすい環境を整備しだれもが生涯現役を目ざせる職場創出の取組みを評価法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科 教授 藤村 博之審査委員長からのメッセージ

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