エルダー2020年11月号
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特集令和2年度 高年齢者雇用開発コンテストⅡエルダー19実施済みの具体的な作業環境の改善としては、2016年に開設した新工場の照明をLED化。また、工場での作業は重量がある紙製品を扱い、身体的負荷が大きいことから、1階の材料を全自動で最上階の工場へ運ぶ自動ラック倉庫を導入。高齢社員だけではなく全社員の身体的負担が軽減されている。◦健康管理一部の工場にはトレーニングルームがあり、高齢社員も積極的に利用するなど、健康増進に役立てている。また、年1回の健康診断に加え、印刷にたずさわった社員や希望者には会社負担で胆管がん検診を受診できるようにしている。新型コロナウイルスへの対応としては、マスクの着用のほか、換気や席の間隔を空けるなど感染防止に努めている。◦安全衛生安全衛生委員会で安全衛生について話し合うほか、消防訓練や救急手当講習を実施し、安全衛生に対する意識の向上を図っている。また、危険がともなう断裁作業については、両手でボタンを押さなければ稼働しない断裁機を導入したことで事故の減少につながった。◦福利厚生長く働ける職場環境の構築を目ざし、福利厚生面でもさまざまな取組みを行っている。例えば、「社員個々の生活の充実が、仕事をがんばるうえでの基本となる」との考えから、転勤や単身赴任については、希望者のみで対応している。また、お祝い金などによる子育て支援は、社員に大いに歓迎されているそうだ。社員間のコミュニケーション向上のため、懇親の場としてクラブ活動や旅行、誕生会などを実施している。なお、地域貢献の観点から、15年前から最寄り駅周辺の清掃活動を継続しており、地域交流の格好の機会となっている。(4)高齢社員の声最高年齢社員の中本吉よし計かずさん(75歳)は、嘱託社員としてフルタイムでデザイン・版下作成の業務をこなしている。パソコン操作など新たな仕事に真摯に向かう姿勢は若手社員のよい見本となっている。森本雅彦さん(65歳)はパート社員として、断裁作業に従事している。日々の現場では、若手社員が8時間かけて行う作業を6時間で終わらせるなど、ベテランならではの手腕を発揮して活躍している。(5)今後の課題同社では、定年を引き上げることも検討したが、賃金が下がらずにいつまでも働くことができ、高齢社員のモチベーションも維持できているため、当面は現状の定年制を維持していくこととしている。一方で、「働き方改革」の観点や若年者の採用を促進するため、2020年度より年間休日を15日増やすことを決定した。これにより生産性の向上が今後の課題となるが、ていねいでミスが少ない高齢社員と、スピードが速い若手社員が協力し合い、互いの長所が活用される職場環境を推進することで生産体制を強化していく。「事業は人なり」を合言葉に全社一丸となった生涯現役人生実現のチャレンジが続く。デザイン・版下作成を担当する最高年齢社員の中本さん断裁作業を担当している高齢社員の森本さん

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