エルダー2020年11月号
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2020.1122度の向上と長時間労働の削減などが必要であることから、各店舗でワーク・ライフ・バランスを考慮した面談を実施し、全社員からの就労環境改善などの意見に耳を傾けてきた。意見のなかには短時間勤務や多様な勤務形態を望む声が高かったため、柔軟な働き方が選択できる雇用制度を整備。満60歳以上の社員を対象として、勤務時間は1日3時間の範囲内、所定労働日数については3分の1以内で短縮できる短時間勤務制度を導入した。◦賃金・評価制度について正社員の給与は勤続年数に基づく年齢給で、賞与は年2回。そのほか、役職手当などの各種手当を支給している。評価制度における評価結果は売上げを考慮したうえで、基本給に反映させている。また、定年後は、メガネ・補聴器販売におけるこれまでのキャリアを加味し、給与の引下げは行わず、定年前の基本給をベースとして支給している。(2)高齢社員を戦力化するための工夫◦勉強会の実施生涯現役で働ける職場を目ざし、職場環境改善や顧客満足度向上などについて、役員も含めた全社員での勉強会を、社内・社外を合わせて年6~8回実施している。内容は多岐にわたり、最近では、「人口減少時代を見据えたイノベーションによる意識改革」などをテーマに実施している。同社における「イノベーション」とは、ライフシーン別のメガネ提案専門店の創造であり、メガネを売る際に人の生活を「ONTIME(ビジネス、フォーマル、やや緊張感のある場など)」と「OFFTIME(プライベート、カジュアル、気楽な場など)」に分け、それぞれに合ったフレームや機能を提案することである。そのためには相手のことを深く理解できる人間力が必要であり、高齢社員の豊かな人生経験が大いに役立っている。また、各店舗全社員を対象に、高齢社員が講師を受け持つ研修を5年前から毎月2回実施している。これまでの経験における販売・営業の手法や接遇についてロールプレイングを行うなど、若手社員への技能伝承も含めた研修となっている。研修を通じて、社員同士がコミュニケーションをとる機会が増え、信頼関係の構築につながっている。◦資格取得に向けた取組みメガネや補聴器の資格取得においては、通信教育で数年を要するが、通信教育の経費・講習会などにおける経費は会社の全額負担としている。現在2名の高齢社員が補聴器の資格を取得しており、今後は毎年少しずつ資格取得者を増やすことを目標としている。◦顧客カルテの付加価値の見直し全国展開するメガネ販売のチェーン店が増えているなか、これまでの「マイ顧客」から「生涯顧客」をつくることを目標として、高齢社員と若手社員が共働して「顧客カルテ」の付加価値の見直しに着手した。従来の顧客カルテは、顧客についての情報が少なく、十分に活用できていなかったため、新入社員でも顧客情報を把握できるよう、新たに「接客内容・顔の特徴・対応者・来客履歴・今後の提案」などの情報を加え、顧客情報の共有化を図った。これまで店舗ごとに保管していた顧客の情報を共有化することで、業務が円滑に進み、「生涯顧客」に向けた新たな顧客対応が構築されつつある。◦データ化・マニュアル化について高齢社員の優れた技術や豊富な経験を伝えるマニュアルなど社員が共有できるデータや資料がなかったことから、高齢社員と若手社員が共働で顧客一人ひとりに合ったサービスを提供するための顧客管理システムの開発を進めている。高齢社員が持つ技術・経験を共有化し、若手社

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