エルダー2020年11月号
28/68

2020.1126もきちんと定年で辞められる仕組み」をつくった。◦継続雇用制度創設当初は、年金受給開始年齢までを限度に再雇用する制度であったが、2007年12月からは、「65歳まで希望者全員を継続雇用」、2019年6月からは「66歳以降は法人が認めた者を70歳まで再雇用する」ものとした。とはいえ「元気でいつまでも働いてほしい」が方針であり、実態は70歳を超えても継続雇用し、現在の最高年齢者は74歳の調理職員であることから、規定に定めた「70歳」は概おおむねの到達目標となっている。◦職場環境の改善①バリアフリー、クッション床の設置施設全体をバリアフリーに設計し、建物の床面はクッション床を採用した。クッション床は足や腰への負担を軽減するため、広い施設内を行き来する職員にとって効果は大きい。また、入居者の転倒による骨折などが回避しやすいことから、職員の緊張感の緩和にもつながっている。②浴室にリフト浴を設置全ユニットに1台ずつ「リフト浴」を導入している。通常、個浴支援は3~4名の介護職員で行うが、リフト浴はマンツーマンでも対応でき、移乗の必要がないので、心身ともに職員の負担が少なくてすむ。入居者にとっても流れ作業で入浴支援をされるよりも、入浴から居室まで1人の職員に対応してもらえる方が、より自宅での生活に近くリラックスできる。③休暇を取得しやすい職場月に9日ある公休に加え、毎月有給休暇を1〜2日取得することが慣習になっており、有給休暇が取得しやすい風土が醸成されている。「通院のために特別に休暇を取得する必要がなく助かる」という声もあがっている。公休と有休を上手に使い、仕事と健康づくり、プライベートを充実させている。(2)資格取得やキャリア形成支援の取組み◦喀かく痰たん吸引の実習指導による介護スキルの習得所属するベテラン看護師が喀痰吸引実習指導を行うほか、認定の取得にかかる費用の全額を補助し、研修を修了しやすい環境を整えている。研修を修了し喀痰吸引が可能になった介護士には夜勤帯での対応を任せ、何かあれば看護師に相談できる体制を整えている。◦腰痛予防の介護技術の習得訓練理学療法士を講師として招き、移乗行為における腰痛予防の研修を実施している。介護職は腰痛になりやすい職種であり、腰痛がひどい場合は仕事を休まざるを得ないこともあるため、予防のための重心移動のコツは体得しておきたい重要事項だ。研修では職員同士で役割を交代して実践することで細かな所作、要領を体得。技術を習得した職員が、普段から現場で未習得の職員に教える習慣も根づいている。◦全職員を対象とした研修の実施「人を育てる」研修として、現場で役立つ実践的な知識を身につける内容を盛り込み、定着をうながすために同じ研修を複数回行っている。例えば、薬剤師を講師に招いた薬剤についての研修では、入居者が使用する薬について、効用はもちろん副作用まで解説してもらい、よりふみ込んだ指導内容により見識を深めている。研修のポイントは毎回「振返り」という課題を配布し、提出を課している点。内容は研修の重要事項についてのイエス・ノー形式の設問のほか、研修を受講した感想、今後の活用、目標などとなっている。なかには「振返り」に、日ごろの心配事や意見を記述する職員もいる。職員の率直な意見は個人の抱える問題や職場づくりのフォローにつながることから、「振返り」は研修の理解度を図るだけではなく、コミュニケーションツールの一つにもなっている。(3)意識・風土面の改善◦施設の目標と理念施設の目標である「自分や家族が入居したいと思える『もう一つのわが家』」としての施設づくりを、施設長を中心に、高齢職員は若手職員の「応援団」となって実現を目ざしている。◦施設長とのコミュニケーション施設長は首都圏で障害者支援に14年ほど従事した経歴を持つ。ボランティアグループを主宰し、運営にたずさわるなど、豊富な経験を有し、

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る